open

92. はじまりの日

 

絵本の初版は二〇一〇年。そこから六年経って、この絵本を作ったボブ・ディランはノーベル文学を受賞した。
その理由である「偉大なるアメリカの歌の伝統に則って、新しい詩の表現を創造したこと」は、今月の絵本のベースとなった「forever young」の歌詞からも感じることができる。
また、彼は、「自分の曲は文学に相当するのだろうかと問い続けていた」ことを、後日知ることになるのだが、こうした彼の考え方、人となりも背景にして、読み深めていくと絵本のすばらしさを感じていただけると思う。
ボブディランの曲を聴きながら読んでほしい。

絵本のタイトルは、直訳すると「いつまでも若く」。
しかし、訳者アーサー・ビナードは、『はじまりの日』としている。
アーサーさんは、アメリカ生まれ、現在日本に住む翻訳家であり詩人だ。
平和へのメッセージ、戦争を伝える著書・絵本も出版している。
アーサーさんと、ボブ・ディランの詩の大きな共通点は、この平和への祈りではないだろうか。

絵は、ポール・ロジャースさんによって描かれている。
この人もまた、絵本づくりにあたって、彼を深く理解することから始めている。
そして、繰り返し聞いた彼の曲から見えてくる景色、彼に勇気を与えた人々のことなどが、絵本から伝わるようにつなぎ合わせた絵にしている。
よく探してみると、ビートルズの四人や、アインシュタインなども登場しているので、探しながらページをめくる楽しみも味わえる。そして、ノーベル文学賞を受賞する六年も前から存在することに驚きを覚えるはずだ。

こうして、訳・絵の二人の表現者も加わった、平和な世界を自らもたらせるような人になってほしい・・という人生のエールが伝わるボブディランの歌「forever young」は、一冊の絵本となったのだ。特に、平和への祈りは「流されることなく、流れをつくりますように」の訳詞と、国や人種を超えた人々が「STOP THE WAR」を呼びかける絵でも、読み取れる。
令和が始まった。人々が、より美しい時代に向けて、心を寄せ合い文化を育ちあおうという時代がやってきた。令和の元号が発表された時、外務省は、外国政府へ誤解を防ぐため、海外向けに英語で「ビューティフル・ハーモニー(美しい調和)」と訳を発表した。それは絵本に込められた「まわりの人びととたすけあっていけますように」「きみの心のうたがみんなにひびきますように」のメッセージにも重なる。
この令和の時代で、私たち一人一人が輝く歩みができますように。毎日がはじまりの日。

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

よく読まれている関連記事