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中高生が無料で勉強できる教室「学術の森」を運営

教育は国を支える根幹をなすため、継続的な投資が必要である。
受けた教育水準や進学した学校によって就職先を選択ができる幅が違うという現実もある。
また、学びたくても学ぶ機会や環境を制限される子供たちもいる。
家庭教師派遣や教材の出版を手掛ける株式会社ガクジュツ(中村信二社長)は、中高生が自由に学べる無料教室「学術の森」を運営し、学びたい子供たちを支援している。
「無料で学べる学術の森を全国に広げたい」という中村社長に話を聞いた。

子供が自由に勉強できる環境が減っている

―家庭教師派遣や出版事業に加えて、子供たちに無料で勉強できる場「学術の森」を天神で運営していらっしゃいますが、学術の森を始めた経緯について聞かせてください。

 

中村

私は、学生(西南学院大学)時代から家庭教師の派遣を事業として立ち上げました。しかし、一方で事業を通して様々な家庭の事情についても知るようになりました。
家庭教師や塾は、お金がかかります。
家庭教師を頼みたいが、経済的な理由などの諸事情によって、子供の教育にお金をかけられない家庭が多くなっているのが気になっていました。
私たちの世代は、学校に残って勉強することもできました。
今は防犯上の都合で施錠が早くなり、遅くまで残って勉強することができなくなっています。
図書館でも自習は制限されるなど、子供がお金をかけずに自由に勉強できる環境が減っているのです。
それなら家で勉強すればいいと思われるのですが、家でも集中できないケースや環境が多々、見受けられます。
それで、三〇年程前から無料で子供たちに勉強を教えられる寺子屋みたいなものを作りたいと考えていました。
その思いが、三〇年経った今、やっとできるようになったということです。

中高生は無料で利用できる

―対象となるのは、どのような子供ですか。

 

中村

元々は、母子家庭や父子家庭など経済的に困難な家庭の子供たちをメインに受け入れようと考えていましたが、勉強したい子供たちは誰でも通うことができるように対象を広げました。対象となる学年は中学生と高校生で、小学生は受け入れていません。
小学生はまだ、遊ぶことを優先すべき年代だと考えているためです。
それに、浪人生も受け入れていません。
朝から夕方までの時間帯は、不登校の子供も通ってきます。
いじめや先生と折り合いが良くないなどの理由で、学校に行きたいけど行けないという子供も来て良いということにして、希望があれば受け入れています。
不登校の子供が当教室に通うと、中学生の場合は出席扱いにすることもできます。
もちろん、校長先生など学校側との話し合いを行い、了承を得てからのことですが、福岡市内の大半の学校では認めてもらっています。

 

天神教室。子供たちが自由に勉強できる環境が整っている。

 

―希望者はどのように利用することができるのですか。

中村

教室は、日祝祭日とゴールデンウィーク、盆、正月以外は月曜から土曜日まで毎日、朝一〇時から夜九時まで開けています。
対象学年の子供であれば、誰でも利用することができます。利用料は無料です。
講師の先生方も常勤していますから、勉強していて分からない所は質問することができます。
先生から教えてもらうのも無料です。
コピーも無料で使えますし、参考書、問題集も無料で貸し出します。
希望者はタブレットを借りて、教室内に限りネットの講義を無料で受けることもできます。
小学一年から大学受験までの五教科の講義をオンデマンドで、自分が見たい講義を見たい時に見ることができます。
学校の授業は一回しか聞けませんが、オンデマンドなら何度でも聞くことができます。
講義が細分化されているので、苦手科目や項目を集中して勉強することもできて効率的な学習ができます。
中学三年生が一年生の講義を見て振り返ることもできますし、先を勉強した人は中学生でも高校の授業を見ることができます。
先に進みたい人はどんどん先の勉強もできるというわけです。
この動画を見ながらでも、分からない所は講師に聞くことができます。
一講義が五分~一〇分程度で構成していますので、子供たちも飽きずに見ることができます。
塾と違って無料なので、いつ来なければならないということもありません。
本人が勉強したい時にくればいいわけです。

無料教室を全国に広げたい

壁のボードに貼られた紙は、子供たちの夢や目標が綴られている。

 

―利用するには親や本人の予約が必要ですか。

 

中村

予約の必要はありません。
ただ、時期によっては満席にります。その場合はお断りすることもあります。
また、親御さんにもお子さんの状況が解かるように、出入り口にICタグを読み込む機械を設置し、子供がnanacoやSUGOCAなどIC系カードを読み込ませると、親御さんにメールで知らせます。
それで、親御さんとしては教室に入った時間や退出した時間を把握することができますから、安心でもあります。
無料の学習室というのは、他にもあります。
一週間に二回、三回寺子屋式で開催したり、夏休みや冬休みといった期間のみに開催するところは多いですが、毎日開けて、しかも、先生が常駐しているところは、学術の森以外にはないと思います。

 

―これだけのことを無料で提供すれば、子供や親御さんとしては本当に助かりますし、社会的意義の高い存在だと思います。
一方で、運営のための経費をガクジュツさんが負担することになりますから、継続して運営していくためには、資金的な基盤が必要だと思います。

 

中村

無料教室の運営は、企業からの協賛金で賄いたいと考えています。
一社につき、ひと月一万円から最高でも三万円までの範囲でご協賛をお願いしています。
協賛していただいた企業には、バナー広告や教室の中にも協賛企業として掲示しています。
まだ少しずつといったところですが、協賛によって家賃程度は賄えるようになり、手ごたえを感じています。
今後は、協賛だけで運営できるモデルを構築して、子供たちが無料で学べる環境を全国に広げていくという構想を描いています。
ただ、当社だけでは、人的、資金的な負担などから展開するスピードが遅くなってしまいますので、理念に共感してくださる企業や個人に教室の運営をお願いしたいと考えています。
この無料教室の理念に共感してくださる方は確実に増えていますし、昨年は大野城市にも「学術の森大野城校」を開校しました。

大野城市に教室を開設

―教室の規模はどのくらいですか。

 

中村

三〇名程収容できる広さです。
大野城市で企業を経営されている知り合いの社長が、「良い取り組みなので、うちもやりたい」と始められたものです。
企業からの協賛や講師については、教室で独自に集めていただきますが、参考書や問題集、タブレットを使ったオンデマンド講義など教材や教室の運営ノウハウについては無償で提供しています。
大野城市に教室ができたことで、今まで筑紫野や朝倉、太宰府など南方面から通ってきていた子供たちが、わざわざ天神まで来なくてもよくなりました。
大野城教室が開校したことで、福岡の南に拠点ができましたが、糸島など西方面から天神に通って来る子供も多いですし、古賀市や宗像市など東方面からも来ています。
学術の森に来れば、勉強しやすいし分からない所があったらすぐに教えてもらえるからと、一時間かけて通う子もいます。
ですから、福岡市であれば西と東に少なくとも一カ所ずつはつくりたいと考えています。

 

―学術の森を開校する条件は何ですか。

 

中村

「子どもの事をちゃんとやってくれる」ところであれば結構です。
運営時間などは地域や運営する方の事情に合わせて柔軟に対応してきたいと考えています。
天神は、朝から夜まで開けていますが、大野城校は夕方から開けます。
ですから、昼間は会議などに使っている部屋を夕方から教室として開放することができると思います。
ネットの講義なども用意できますから、一人の管理者と講師がいれば運営できます。
管理者は従業員さんなどでも良いと思います。
子供たちを地域で見守り育てるという意識を高めていき多くの企業などからご協力いただきたいですし、こうした取り組みを通して、地域社会の連携も強まるのだと考えています。

 

―将来を担う子供たちは、家庭だけでなく地域で見守り育む仕組みと環境が必要だと思います。子供たちが自由に勉強できる環境が広がっていくことを期待しています。

 

株式会社ガクジュツ
代表 中村 信二

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