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『「世界のすごいお葬式」』

 

納骨中の不思議な空気

火葬炉から出てきたのは、見覚えがあるような、ないような、実態があるようで、ないような、白い「なにか」だった。

骨になった祖父を箸で拾い上げ、ときに軽くたたいて砕きながら、骨壺に納めていく。
まるでこの世とあの世の境界線にいるような、現実味の薄い、不思議な空間で。
骨を拾う家族四人の間には、悲しみのような、憂いのような、そしてやさしさのような、言葉にできない空気が漂っている。
明るくからからと笑いながら、その空気に身を浸していると、あっという間に白い「なにか」だったものは、骨壺へと納まっていった。
同時に、ところなさげにふわふわと浮いていた気持ちも、あるべきところに納まっていったようにすら思えた…。

勇敢で愛のあふれた行為

葬儀とは、「死と悲しみに立ち向かうための、勇敢で愛のあふれた行為だ」と本書の著者は語る。
アメリカで「葬儀」とは近代に急成長を遂げた一大ビジネスであるという。
しかし、画一化された葬儀ビジネスの「当たり前」は、同時に「死」というものを、生活から遠ざけていった。

一方で、「自分が死んだらどうしてもらいたい?」と気さくに会話する人々、年に一回ミイラ化した遺族を洞窟から運び出して世話をする人々、頭蓋骨にお願いごとをする人々など、世界にはさまざまなかたちで「死」を生活の一部に取り入れている人たちがいる。

一件、際物のように思える本書も、読み進めていくと、人は死とどう向き合うべきなのか、死と向き合うとはどういうことなのか、いたって真剣に探究を続けている本であるということがお分かりいただけるだろう。

(株式会社梓書院 前田 司)

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