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『不味い!』

不味いものは、なぜ不味いのか。
不味い食べ物に遭遇したとき、腹ただしい想いを抱くのは人間の性であろうか。
空腹は最高のスパイスともいうが、お腹を空かせ、楽しみにしていた食事にようやくありつけたとき、脳天を貫く不味さという思いがけない不意打ちを受ければ、怒りを覚えるのも無理ないように思える。

「不味い」に向き合う、飽くなき食への情熱

誰もが多少なりとも覚えがあるだろう、「不味い」ということへの憤り。
その「不味さ」に真正面から向き合ったのが本書である。
著者は寄食・珍食ハンターとしても有名な食の冒険家・小泉武夫氏。
不味いものはなぜ不味いのか。
湧き上がる怒りを乗り越え、「不味さ」の原因を科学的に追及する、飽くなき食への真摯な情熱。
そして、不味さの原因を探る分析力もさることながら、どう考えても美味しくはなさそうな、カラスやカメムシの幼虫までも、「もしかしたら美味いかもしれない」と果敢に挑む姿は誠に敬服する。

「不味い」に出会い、味覚を見つめなおす

不味さを分析することは、同時に美味さを追求することでもある。
世の中に不味いものがあるからこそ、美味いものも存在するのだ。

本書を読めば、不味いものに出くわしたとき、ただただ憤るだけでなく、「なぜ不味いのか」を考えることで、「これも勉強」と思えるようになるかもしれない。
そして不味さの理由がわかれば、同じ轍は踏まないようになるだろう。
また、世の中にあふれる「濃い味」に慣れて、「不味い」と感じることすら麻痺してしまいがちな現代人にとって、自分の味覚を見つめなおす良いきっかけにもなるかもしれない。

(株式会社梓書院 前田 司)

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