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第45回 急成長企業の光と影

急成長した企業の衰退は早い

経営の世界では、「時間を掛けて地道に成長してきた企業は、衰退するのも時間がかかるが、急成長した企業は、一旦傾き始めると衰退するのも早い」と言われます。
むろん例外もあるでしょうが。
皆様もご記憶にあると思いますが、二〇一〇年「一・五秒に一本売れているノンシリコンシャンプー」というふれこみで、一大ブームを巻き起こした企業がありました。
創業三年目で売り上げ二一七億円を達成しました。
ところが、三〇〇億を目前にこの企業は突然表舞台から消えました。
まさに、「急成長した企業は、一旦傾き始めると衰退するのも早い」ということでしょうか。

衰退の原因

その原因について、とある経営コンサルタントは以下のように分析をしています。

①売り上げピーク時に、同業他社が「ノンシリコン」を謳った類似商品を次々と投入し、競争が激化する中で商品の差別化が図れなくなったこと。

②内部管理体制の強化・充実が後手に回ったこと。
約三億円の所得隠しを東京国税局から指摘され、重加算税を含む追徴税一億円の支払いを余儀なくされ、対外的な信用が悪化し、消費者には買い控えの動きも見られた。
東京国税局から所得隠しを指摘されるまで、内部体制の強化に本腰を入れて取り組むことはなかった。

③会社の成長スピードに資金繰りが追いつかなかったこと。
売上がピークを迎えたころ、資金繰り悪化を示唆する情報が複数流れた。
資金需要が増す中で、業容の拡大と資金調達のバランスがひとたび崩れると、当座の資金繰りの問題に発展しかねない危うさがある。

④経営陣の派手な生活ぶりが取引先の離反を招いたこと。
企業が創業期から成長期にシフトし、一定の規模に達すると、経営幹部はそれなりの報酬を手にするようになる。
それ自体は悪いことではないが、会社の絶頂期に「高級外車のポルシェを乗り回す」など経営陣の派手な生活ぶりが、銀行や取引先の離反を招いた。

⑤既存の看板商品に続くヒット商品を生み出せなかったこと。
約二〇種類のブランドを展開していたが「ノンシリコンシャンプー」に次ぐヒット商品を作り出せなかったことが、業況悪化を早めた。

⑥積極的な広告展開が、もろ刃の剣となった。
さらなる成長を目指す新興企業が、赤字覚悟の先行投資として多額の広告宣伝費を投じる例はよく見られる。
将来を見据えた動きとして評価もできるが、成功が約束されたわけではなく多額の出費が破綻を招いた。
目先の利益と、将来に向けた投資のバランスをどう見極めていくかが、新興企業の経営者の難しさである。

皆様ご覧いただいて、どのような感想を持たれますか。
いずれも、絵にかいたようなと言うか、どの経営の教科書にも書かれているようなごく当たり前のことですよね。
でもその当たり前のようなことが、実際の経営の場ではなかなか実践が難しいということです。

むろん経営陣も会社をつぶそうと思ってしたわけではないでしょうが「自分で稼いだ金でポルシェに乗って何が悪い」ということになってしまうのでしょう。
ここが経営の難しいところですね。

長期に渡り売れ続けている商品

私が着目したのは、原因の一番目「売り上げピーク時に、同業他社が「ノンシリコン」を謳った類似商品を次々と投入し、競争が激化する中で商品の差別化が図れなくなった」ことです。
もしも、類似商品が出てこなかったら、独占状態を維持することができたなら、今も成長企業であり得たかもしれないのです。

一年や二年ではなく長期にわたり何十年にもわたって売れ続けている商品があります。
それは、
①だれにも入手できない特殊な材料を使用している。
②製造には特殊なノウハウが必要である。
③特許や商標など法的に守られている。
④大企業が入り込めないニッチでること、等々があるでしょう。

もしも私がこの企業の経営者であったならば、「ノンシリコンシャンプー」を世に出す際に、単に従来のシャンプーからシリコンを除くだけではなく、何某かの商品特徴をあえて作り、それを知財で守り抜いていたと思います。

例えば、既成商品の中からある成分を抜いたただけの新商品では無論権利化はできません(それも考える余地はあると思います)が、ある製品を抜くことによって生じるデメリットを別の物質で補うとかいろんなことが考えられます。
従来からある健康食品に特別な機能性が見つかった場合、それも権利化される時代です。

必要なことは、特に中小企業の経営者は、知財に関する意識をもち、新商品について「なんとしてでも従来商品との違いを出し、それを工夫して知財で守り、類似商品の台頭を防ぐ」という意識を持つことだと思います。

ここに今後の中小企業が目指す道があるような気がしていますし、加藤合同国際特許事務所は今後中小企業に対しそのようなサービスを提供してまいります。

加藤合同国際特許事務所
代表・弁理士 加藤 久

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