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98.『星の王子さま』

空が澄んできた。夜空の星も美しい。
頭上に輝く星のどこかに、「B612」という星があるという。
その星は家くらいの大きさしかないのに、火山もあるし巨大なバオバブの木も育つ。
その星にたった一人で住んでいる王子さま。
ある日大切に育てていたわがままなバラと口論になって、孤独を感じて、友達を探す旅に出た。

この旅の話を、サハラ砂漠で遭難しかけたパイロットの「ぼく」が書いた物語。
それが「星の王子さま」である。

こどもの心を忘れた大人に向け、示唆を含む隠喩にあふれているので、読むには少し難解で、それゆえこの名作は大人のための絵本の代表格として存在している。
例えば、人間の愚かさについて、旅の途中に立ち寄った星の住民で表現されていたりする。
その一人一人はまさにこの現社会に生きる私たちのこと。
また、「ぼく」と王子さま、キツネのやりとりなどから「大切なことは目には見えない」という重要なフレーズを私たちの心に宿す物語だ。

今回は職場で用いるサイズを重視しているため、サン・テグジュペリの原書ではなく、詩人工藤直子さんが訳する「こどものための絵本」を選んだ。
なので、先ほど記した重要なフレーズは、大人に当てたものだから、ここでは用いられていなくて、こどもたちに伝えるメッセージとして、キツネが言った「なつく」ことが記されている。
少し紹介すると、「なつくとは、つながりあうこと なかよくなること 」であり「毎日少しずつお互いのそばに近づいたり、出会う時間を決めてその時間を楽しみに待ったりすること」とある。
今子どもたちに必要なのは、自らのコミュニケーション力で誰もが安心安全と思える場所を創るために、お互いを思いやることが大切だよというメッセージなのだろう。
訳の工藤直子さんのセンスが光る。

このように、解釈は幾通りにあってもよい。
その違いにつまづいて対立していると、王子さまのようにその場から立ち去りたくなる。
確かに、一人ずつ違うのだから解釈の違いを埋めることはできないが、対話と言う虹をかけることはできる。
その行為こそが「なつく」ことなのだ。
つまり絵本に学ぶ仕事術はこの「なつく」行為を促進させるものと言えるのだ。
違いを排除するのではなく、その違いから学び合おうとする在り方が、幸せに生きるコツとなるのだから。

この絵本はとてもこのスペースで収まるものではない。ぜひ、二〇二〇年を迎える前に読み直してみませんか?

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

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