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99.『せかいいちのいちご』

令和最初の年越しを迎える。来年の干支・庚子の意味は「次の波をつくる年」と聞いた。

世界中が注目する世紀のオリンピックが始まり同時に終わる年。
ここから社会がどう変わっていくか、次の波の読みは重要だ。
ちなみに、子年の「ね」は「孳(じ)」という、「生む・多産」などを表す字。
だからねずみなのだ。ふむふむ。このワクワクとドキドキの庚子年の「ね」にかけて増えるから選んだ「せかいいちのいちご」をご紹介したい。

それは、「あるひ、わたしのところに手紙がとどいた」から始まるストーリー。
これからいちごが届くという。
一度だけ、しかも遠くからしか見たことがない「わたし」はときめく。
いちごが届いたらどうしようと、あれこれ思いを巡らせる。

小さな箱に入った一粒のいちごが届く。たった一粒のいちご。
いちごの甘いかおり、手触り、きらめき。
味わったのは、いちごのおいしさだけでなく心を満たす最高の時間をもだ。
庄野さんの絵は、上品な感情表現なのに、文章が膨らんでいく不思議な魅力がある。

翌年、今度は二粒届いた。友人たちと分かち合う。
そこから、毎年冬になるといちごが届く。年々増えていく。
大きな器にも入りきれなくなり、毎日毎日いちご三昧。
びっくするほどの上等のいちごは、食べても食べても減らない。有り余るほどある。
そして、気付くのだった。
「いちばんおいしかったのは?」 絵本の「わたし」は言う、それは、「とろけるような しあわせのあじ わたしの せかいいちのいちご。――それはね さいしょに たべた あの ひとつぶ」と。

この絵本は林木林と庄野ナホコの私の中で最強のコンビで創られている。
カバーのそでにある「ふえるとへる 増えると減る」。それだけでも十分に引き込まれるだろう。

いちごと一緒に増えたものはなんだろう。減ったものはなんだろう。
どうしたら、減らなかったのだろう。
どうしたら、増えたままにできたのだろう。
このメタファを読み解くと、人の数だけ答えはあるはず。
だが私なりに考えてみた。ここでの「ふえるとへる」はいちごに対するドキドキ・ワクワクの気持ちのこと。
この気持ちを「ありがとう!」という言葉(形)に変えてしまえば、「次の波」が生まれるのかもしれない。
次の波は意外なところから生まれると教えてくれているのかもしれない。

今年は何を増やしましたか?何が減りましたか?
二〇二〇年は、何を増やしますか?それをどうやって楽しみますか?

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

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