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『日本軍兵士-アジア・太平洋戦争の現実』

 

来年で終戦から七五年が経とうとしている。
その間、太平洋戦争の研究、世の中の風潮も変遷してきた。

先の大戦への反省に立つ研究から、政治史としての戦争研究など、さまざまな視点から研究がなされ、世の中の風潮も、自虐史観から日本軍の勇猛さを称賛するような本が多数出版されるまでに変わってきている。
そんななか、実際に戦線に立った兵士たちの目線と、客観的な数字から、太平洋戦争の実態に迫った本書。
情緒に訴えかけず、淡々と事実を検証している本書からは、いままで目をそらされていた太平洋戦争の真実が浮かび上がってくる。

日露戦争の戦死者が九万人であったのに対し、太平洋戦争の犠牲者は軍人・軍属・民間人あわせて三一〇万人。
これは現在の福岡市の人口の倍以上に匹敵する。
しかもその九割が戦争末期、終戦までの最後の一年ほどで亡くなっているのである。
さらに注目すべきはその死因だ。
戦死者の大半は、飢餓や病気、自殺や「処置」と呼ばれた傷病兵の殺害によって亡くなっているのだ。

栄養失調で体力を失い、病気にかかるも治療を受けられず、物資の欠乏から劣悪な衣服や靴等で行軍を強いられるという、想像を絶するような凄惨な状況に、我々と同じ人間が立たされていたのである。
軍隊内でのいじめや、特異な軍事思想、絶望的な物量差に無謀な作戦立案の実態など、知れば知るほど言葉にできない思いが沸き上がる。

(株式会社梓書院 前田 司)

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