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九州内での経営統合を進め 三年後に三〇〇人体制を目指す


藤本周二 福岡・東京事務所 代表社員(左) 笠井良一 天神事務所 代表社員(右)

昨年一一月、エスペランサ税理士法人(藤本周二代表)と税理士法人かさい会計(笠井良一代表)が経営統合を果たし、約八〇人規模の税理士法人「アネーラ税理士法人」が誕生した。
三年後には三〇〇人体制を目指す。
東京大手資本との競争が激しさを増すなか、地方の会計事務所が進むべき姿にも映る。
統合の目的や今後の展開について藤本氏に話を聞いた。

地方の事務所でも経営基盤の強化が必要

―昨年一一月に税理士法人かさい会計と統合されました。
まずは、統合の目的から聞かせてください。

藤本

ひと言でいうと、福岡や地方の我々の業界でも企業規模が必要になってきたということです。
税理士や会計士の大半は、地域に密着したビジネスでした。
目に見える範囲で、目に見える人がやっていたわけです。
競争も地域内でのことでした。
ところが、ネットが普及しITが進化したことで、どこにいても業務を受託、サービスを提供できるようになりました。
東京の税理士事務所が福岡や地方都市の企業から仕事を受けるようになったわけです。
そうなると、これまで以上に競争原理が働きます。
会計事務所の経営者にも企業経営の能力がより問われる時代になったわけです。

東京の大手事務所との競争に負けないためには、資本力など経営基盤の強化が必要になります。
規模の大きな事務所はより大きくなり、小さな事務所との格差は益々広がります。
例えば、東京の大手会計事務所の売上が一年間で一〇億円増えたとします。
その増加分が当事務所の年間売上よりも大きければ、年々、企業規模において差が開いているということです。
これは、東京と福岡という都市間の格差にも表れており、都市における人口の推移を見ても明らかです。

人口が多い所でビジネスは拡大する

―福岡県も人口は増加していますが、東京への集中はその比ではありません。

藤本

政府統計による数字を見ると、戦後の一九五〇(昭和二五)年の人口は、福岡県は東京、北海道、大阪、に次いで全国で四番目の規模でした。
愛知県や兵庫県よりも人口は多かったのです。
当時は、東京都の人口が約六二八万人に対して福岡県が約三五三万人と約二七五万人とそれほど大きな差ではありませんでした。
ところが、二〇一八(平成三〇)年になると、東京が約一三八二万人に対して福岡が約五一一万人と八七一万人程もの差が生じました。
同じ時期に福岡が約一五八万人増加したのに対して東京は約七五四万人も増えています。

また、福岡よりも人口の少なかった神奈川県、埼玉県、千葉県など東京周辺の県の人口が急激に増え、福岡県は九位にまで順位を落としました。
現在、東京、神奈川、埼玉、千葉の人口だけで約三六五九万人も抱え、関東圏に物凄い人口が集中しているということがわかります。
人が多い所でビジネスが大きくなるのは当たり前ですから、東京や関東の事務所の拡大が加速するのも当然といえます。

地域内での競争だけでなく、東京、関東圏の巨大企業との競争にさらされるのは、我々の業界だけではありません。
全ての業界でもいえることです。
笠井先生も同じような考え方を持っておられ、以前から親しくしていただいていましたので、同じ思いから今回の事務所統合となりました。

二人代表制

―今回の統合は、対関東を見据えたものだということですね。

藤本

東京や関東との競争で生き残るには、福岡だけではなく九州での基盤強化も必要だと考えています。
ですから、統合は今回だけのものではなく、九州一円の他の事務所とも進めていきます。

今回の統合で約八〇人の組織になりました。
来年は一〇〇人、そして三年後に三〇〇人体制を目指す計画を立てています。
アジアにも近いので、その地理的優位性を生かして海外での展開も視野に入れています。

―海外も視野に入れているというのは、どのようなイメージですか。

藤本

イメージは、大きく二つあると思います。
例えば、タイを例に挙げます。
一つは、日本の企業がタイに進出する際、その企業の税務顧問を現地で引き受けるというオーソドックスなケースです。
もう一つは、タイも人件費が上がっていますが、タイの人件費格差を活用して、日本の入力業務、事務などをタイでやってもらうというものです。
その事務処理センターをつくることも構想に入れています。

―統合後の藤本所長と笠井所長の役割は。

藤本

二人代表制です。笠井先生は天神オフィスの代表。
私は福岡と東京の代表を務めます。
元々、当事務所は法人関係、笠井先生は資産税関係という得意分野を持っていますので、お互いの強みを生かしながら相乗効果を発揮していきたいと考えています。

規模の二極化は加速する

―今後、規模拡大のために業界内での経営統合の事例は増えると思いますが、小さい事務所が生き残っていくのは益々難しくなりますか。

藤本

表現が難しいですが、五人以下の事務所は生き残っていけると思います。
一方、一〇人や二〇人規模の事務所は、規模からみて急激に売上を伸ばすことが難しいですから、宣伝広告などに思い切って資金を投入できません。
一方、東京の大手事務所は、潤沢な資金を背景に積極的に広告を出してきますから、知名度を含め有利に展開できます。

また、一〇人、二〇人の事務所になると、事務所オーナーとお客さんとの関係が薄くなりがちです。
ところが、五人以下の事務所だと、事務所オーナーとお客さんとの関係は濃いはずです。
オーナーとの関係が濃ければ、大抵のことが起きても大丈夫です。
だから、小規模の事務所は生き残っていけると思いますが、中規模のところは厳しくなると考えています。
どの業界でも言えることで、それが今、我々の業界でも起きているということです。

監査法人も設立する

―今年の目標を聞かせてください。

藤本

昨年は、事務所をアクロスの五階から一一階に移転、拡張し人も増え、売上も大幅に伸びました。
そのうえで、今年は三つの目標を掲げています。
まず、一〇〇人体制にすること。次に、監査法人を創ります。
地方は人口が少ないから、なんでも万屋的にやる必要があります。
そのなかで、監査の仕事も受注できる機会が増えると考えています。
三つ目は東京事務所の移転です。
今の東京の事務所が手狭になってきましたので、年内に移転します。

―今回の統合で顧客数もかなり増えたのではありませんか。

藤本

当事務所の顧客は、統合によって法人、個人合わせて二〇〇〇件ほどになりました。

―毎年、年末に発表される税制改正大綱について解説するセミナーを二月に一〇〇人ほどの規模で開催されています。
事務所統合後の開催ということで、今回はさらに規模が大きくなりそうですね。

藤本

今年の税制改正セミナーは二月二〇日にアクロスの国際会議場で開催します。
今回は顧問先をはじめ二〇〇名の参加を見込んでいます。
福岡県や福岡市、各新聞社も後援してくださることになりました。
これも統合効果ということでしょう。夏にはもっと大きなセミナーを開催しようと考えています。

経営者の理想像は「西郷さん」

―ところで、企業の経営を見られる立場から、中小企業を取り巻く環境は、今後、どうなると考えていますか

藤本

より厳しくなるでしょう。大企業も同じです。
一芸に秀でているところは生き残ることができます。
差別化が全てですね。福岡はAIなどITが遅れていますから、ITを上手く使えるところは良くなると思います。
当事務所もシステムエンジニア出身者を入れました。
お客さんの経理周りの提案をしています。
リーズナブルな価格で提案しますので、凄く喜ばれています。
お客さんの経理関係を効率化するわけです。IT化は目に見えますから取り組みやすい。
IT化の支援にも力を入れていこうと考えていますので、システムエンジニア出身者をもっと採用していきたいですね。

―これからの時代、企業に必要な力は。

藤本

いろいろあるでしょうが、三つ挙げるなら一番が営業力、二番が技術力、三番が組織力です。
多くの会社で営業力と技術力は相関関係があります。
技術が高ければ営業もしやすいですから。
営業力と技術力で一生を終えるという会社の規模は、だいたい三〇人以内が目安だと思います。
それ以上の規模の会社やさらに規模を拡大したいという願望がある場合は、組織力が問題になります。

―組織力を高めるためには、経営者にどのような資質が必要ですか。

藤本

全人格的なものだと考えます。
西郷隆盛さんのような人だったら大会社が作れていると思います。
本当の西郷さんを知りませんが、周りが楽しく頑張れるような西郷さんのイメージです。
そういう大きな器を持った経営者が理想です。

―人事評価制度などで悩んでいる経営者も多いようです。

藤本

人事評価を創る前に社長が信頼されていないと意味がありません。
だから、西郷さんに近づけるように努力することが必要なんだと思います。
私も出来てはいませんが、常にそうなる必要があると思っています。
やはり、経営者は全人格的なものだと思います。
全人格的に信頼される経営者になれば、何もしなくても、従業員が「社長のために」と一所懸命働くようになりますよ。
そうなれば、どんな時代でも生きていけます。

―今年の活躍も期待しています。

 

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