open

経営者と税理士と節税|第九〇回 M&Aというけれど②

先月、会社の売り買いの案件が進んでいるとお話ししました。
一月末に基本合意書が締結され、具体的に詳細を詰めいていく作業に入りました。

基本合意に至るまでも時間がかかります。
売り手さんは、一円でも高く売りたいし、買い手さんは一円でも安く買いたいという、当たり前の気持ちがあるからです。
ようやく、売買金額は決まりましたが、なかなか内容までは決まりませんでした。
つまり、株の売買代金と前経営者への退職金額をいくらにするかということです。

総額が決まっても、内容によって、前経営者の手取り額や今後の法人の決算内容(納税額や赤字金額)に大きく影響するからです。
通常、総額の振り分けは次のようになることが多いように思います。

①全額、株の売買
②株の売買、退職金
③株の売買、退職金、平取締役 としての一定期間の役員報酬

①の場合、売り手さんは、株の売買利益の二〇%を申告して課税関係は終了となりますが、買い手さんは株の購入ということになるので、多額の支払いをしても一円も損金も発生しないことになります。

②の場合、多額の退職金を支給することになり、株の評価は著しく下がります。
通常は、多額の欠損金が発生し、次年度以降、数年は法人税の支払いが発生しないことになります。
これから法人を運営する買い手さんには有利な処理となるかもしれません。
しかし、買い手さんは退職所得に掛かる多額の所得税・住民税の支払いが発生する可能性があります。

③の場合、買い手さんは、一定期間にわたって前社長等に対して役員報酬を支払うので、会社の売買時の準備資金が少なく済みます。売り手さんも、一時点での課税とならないので、支払う税金が①や②の場合より少なくなる可能性もあります。
しかし、当初の約束通り、買い手さんが、数年に渡って役員報酬を支払ってくれる保証はありませんので、一定のリスクを伴います。

このように、第三者間での取引では、どんな条件で売り買いを進めるかで、手残り、法人税の支払い、準備資金等に影響を与えることになります。
今回の案件では、売り手さんの最初の提案は、ほぼ①でした。
①では、売り手・買い手の双方にメリットがない旨を説明し、なんとか③で進めようとしましたが、②で決着となりました。

次回は同族間での合併等についてお話します。

よく読まれている関連記事