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101.『うまれかわったヘラジカさん』


年が新しくなると嫌でも歳が増える。体も確かに「老い」に向かっている。
体だけではない。ついついこのくらいで・・と甘える自分がいる。
老いるとはなんだろう!この問いを持った今年初め、能の「初心」と言う言葉を思い出した。
その言葉を確認するために開いた本(能―六五〇年続いた仕掛けとは/安田登・新潮社)。
この伝統芸能の奥義に、私たちがお手本とすべき生き方や組織のマネジメントにも通じる考え方があり、そこから繋がってきた絵本が今月の一冊となる。

能の伝統は、世阿弥・観阿弥親子によって確立された。
特に世阿弥の伝書による「初心」という考え方は、今でも大切にされこれまでの歴史を支えてきた。
この初心は私たちが通例的に用いる「何事においても始めた頃の謙虚で真剣な気持ちを忘れず」とは違う別の意味をもつ。
そして「ぜひ初心」「時事の初心」「老後の初心」と、自己成長とともに初心の意味は深まっていくというのだ。

主人公のヘラジカさんは自分をしっかり持っている。嫌いなことは手を出さない。
でも「ぼく ほんとに このままでいいのかなあ」と気づいた。
変わりたい気持ちが芽生え、とりあえず動く。この辺りが人間ぽくて実に面白い。
例えば、インターネットでその何かを探したり、占いを頼ったり、お祈りをしたり、果ては、宇宙に呼びかける。
皮肉になるかもしれないが、もしかすると、本を読み漁ったり、高額なセミナーに参加したかも? そうしながら「なんにもできないから、なんでもやってみよう」と決心し、ヘラジカさんは操縦もできない船にのり・・・自力で生きながら変化していく・・というお話。

冒頭に戻るが、老いとは、昔の自己イメージにしがみつき、自己変容をやめたときにはじまるのではないだろうか。
誰かに何かに変化を頼っても叶わないのだ。
自力で動いていくことは痛みも伴うがそれを塗り替えるように常に初心に戻る。
新しいことを謙虚に吸収しようと取り組んでみる。
これが能の老後の初心と言うらしい。

新しいというのは気持ちがよい。節分を超え、いよいよ暦も春。
物事を達観できる年齢になったときでも、ヘラジカさんを見習って、常に自分を真っ白な状態にして古い考えを裁ちきり(初とは、衣を刀で裁つ意、)次のステージに自分を新しく更新する。
これを忘れないようにしたい。初心忘るべからずだ。
そして、若い世代には、「ぜひ初心」と、「時事の初心」を贈りたい。
今を大切に積み重ねていくために・・・それは、また別のお話で。

あなたは、初心に戻れていますか?

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

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