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102.『フレデリック~ちょっとかわったのねずみのはなし~』

冬に備えて忙しくしている四匹の仲間とは違って、フレデリックは一人だけじっとしている。
仲間が指摘すると彼は「何もしていないわけじゃない」という。
訪れる冬のために、おひさまの光や色やお話のたねを集めているという。
そのうち冬となり、始めはたくさんあった食べ物も話も、徐々に尽きて元気がなくなってきた。
その時、みんなは思い出す。
「そうだフレデリックは何を集めたんだい?」そこで、フレデリックは、集めたおひさまの光でみんなを温め、集めた色で心を彩った。
そして、俳優みたいに集めた言葉で四匹のための歌を披露した。
「驚いたなあ、フレデリック、きみは詩人じゃないか。」

ネタバレだが、何もしないように見えたフレデリックにも、みんなとはちょっと違う重要な仕事があったのだと、最後に気付くというお話である。

社会にはいろんな仕事がある。
AIの進歩とともに、一〇年前にはなかった仕事が今はある。
同じように一〇年後には今ない仕事が生まれるのだ。
逆に、何世紀も変わらず存在する職業もある。
特に芸能に関する仕事は、古代より人々を楽しませ心を支えてきた。
彼らは過酷な労働はしないが、それぞれの時代に必要な潤いを与えるために芸を研き役割を果たしてきた。
詩人フレデリックは芸能人というわけだ。

もう一歩踏み込んで絵本を読んでみた。
企業の業務改善面談時「あの人は何もしない」「あの部署は何をしているのかわからない」といった現場の声を聴くことがある。
人の仕事量を正確につかむことはできないと知りつつも、忙しくなってくると「あの人は・・」と、自分だけが頑張っているように言いたくなるのだという。
もちろん指摘通りの人もいるだろうが、果たして自分だけなんだろうか。

会社は一つの目的に向かって進んでいる。それが壮大であればあるほど、自分はその目的のどの部分の役割を果たしているのかが見えなくなってくる。だから、TOPは見えるように感じるようにビジョンを語る。例えば、トヨタの実験都市「ウーブン・シティ」の動画を見せて、「今あなたはこの部分を担っている。あの人はここを担っている」と、言われる前と後では理解はどう変わるだろうか。組織はチーム。向かっている先は同じでも違う仕事をしているのだ。そうやって読むと、フレデリックが集めたのはビジョンを表現するための光と色と物語であり、夢であり希望だ。なぜって、私には彼が、詩人ではなく豊田章男さんに見えてしまうから。
あなたは、何を集めますか?何を社員に語りますか?

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

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