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新型コロナウイルス問題を機に企業のIT化は加速する

新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で深刻化するなか、国内でも感染が拡大し企業活動や市民生活が影響を受けている。新型コロナウイルスとの戦いの後、ITの普及で我々のビジネス環境は大きく変わると指摘されている。

グローバル化のリスク

新型コロナウイルスの感染拡大によって、我々の生活や仕事に様々な影響が出ている。
ウイルスという目に見えない脅威にどう立ち向かっていくのか。
世界中で感染が拡大し、いつ収束するのかもわからない状況下で、これまでに経験したことのない模索が始まったといっても過言ではないだろう。

今回のウイルス感染問題では、二つのことを考えさせられた。
まず、グローバル化に伴うリスクである。
近年の自由貿易の考え方やそれに伴う規制緩和などによって、国家間で人や物の往来が活発になった。加えて、ITの急速な発達と普及がウェブでのコミュニケーションや取引上でのストレスがかなりなくなり、グローバル化はさらに進んだ。
中小企業や個人であっても、海外との取引が容易になった。
海外での会社設立、商品の輸出入、工場の建設、生産拠点の設置を設けることが特別なことではなくなった。
日本企業は、アジア諸国など海外の安価な労働力を求めて海外に進出し生産コストを下げるなど、国際的な競争力をつけ、マーケットを世界に広げた。
その結果、国内産業の空洞化という問題が生じたことも確かではある。

グローバル化は、経済を複雑にしたともいえる。
自動車部品やスマートフォン、住宅設備機器などあらゆる分野のモノづくりにおいて、幾つもの国の企業が持つ技術や部品、資源に頼らないと競争力の高いモノづくりができないという現実がある。
そのため、重要な部品、技術、資源を有する国や企業がトラブルに見舞われると、とたんに生産ラインがストップしてしまい、商品が供給できないという事態に陥る。
今回のコロナウイルス問題では、中国での感染が拡大したことで、人の行き来だけでなくモノが入って来なくなった。

殺菌用の薬剤を入れる容器やマスクなども中国での需要が急増したことで、日本で品不足が起きた。グローバル化がもたらした複雑な経済においては、カントリーリスクと他企業との関連性についても把握し、問題が起きた場合に対する備えが必要になるということが、改めて浮き彫りになった。

複雑化する経済

二つ目は、この関係性についてだ。
「風が吹けば桶屋が儲かる」「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪を引く」などと言われるように、複雑化している関係性もリスクやチャンスになるが、時代の流れや環境の変化などの要因によって関係性は変化する。
今回のような危機やトラブルが発生した場合、自社の商品やサービスと関係するのはどのような企業や地域なのか。
また、直接・間接的に影響を受けるのはどのような業界や企業なのかを把握しておかなければ、リスクへ対処できず大きな損失をこうむる可能性があるということである。

今回の感染拡大によって、国内ではどのような影響が出ているのか。
クラスター感染を防ぐために政府や自治体は、展示会やコンサート、演劇、コンサート、大規模会議、セミナー、交流会など人が集まるイベントの大半で中止、もしくは延期を要請した。
それによって、イベントの主催や企画、会場設営、ホテルやホールなどの会場運営、チケット販売、広告、印刷、グッズ販売、スタッフ派遣、警備、タレント派遣などに関わる多くの会社や人が、甚大な被害を受けている。
イベント中止は、交通機関や周辺の飲食店、宿泊など観光業にも影響を与えた。
三・四月は卒業や歓送迎会シーズンである。
卒業式の中止は、着物レンタルや着付けとヘアメイクを受ける美容室を直撃した。
そして歓送迎会など宴会の中止は、飲食店関係の売上を押し下げた。
宴会がなくなると、飲食店に納めている魚や肉、野もが売れなくなった。
サービス産業だけでなく、一次産業、二次産業にも想像以上の損失が出ている。

感染の拡大を防ぐために人の移動も制限された。航空各社は利用客の減少に減便を余儀なくされた。空港内の店舗も深刻な売上の減少に頭を抱える。JRも乗客数がかなり減少した。
企業は在宅勤務を取り入れ、高齢者は病院に行く回数を減らした。
通院のために利用しているタクシーにも乗らなくなった。
人びとは、家から外出しなくなり、百貨店は大きく売り上げを落とした。

関係性の把握も重要

実に多くの業界が売り上げ不振に苦しんでいるが、今回の新型コロナウイルスで需要が伸びたところもある。
例えば、未だに多くの店の棚に陳列されていないマスクだ。
新型コロナウイルスによってマスクメーカーやマスクを販売するドラッグストア、コンビニなどは需要過多への対応に追われている。
原料を提供するパルプ関連、ネット通販などの業績も押し上げる。

企業では、感染リスクへの対策手段としてテレワークの導入を進めている。
国は、地震や集中豪雨、台風など日本での自然災害が頻発する現状への対策として、一カ所に多くの人や施設を集中させるのではなく分散型の環境を整えることで、リスクの軽減を図ろうとしてテレワークを推奨してきた。
東京オリンピック・パラリンピックでも開催期間中の混雑やリスクを避けるため、テレワークの導入を企業に呼び掛けた。
しかし、テレワークの導入は、思うように進んでいなかったところもあったようだ。

ところが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大への対策として、多くの社員を抱える大企業も「導入やむなし」と、一気にテレワーク導入に舵を切りはじめた。
国も、新型コロナウイルス感染症対策のためにテレワークを導入する事業主に対して相談窓口の設置や助成金を設けるなどして普及を後押している。
そのため、ウェブ会議システムやチャットシステムのツール、サポートを提供する企業への問い合わせが急増しているとも聞く。
テレワークの普及には当然、通信環境の整備とPCやモバイル端末などの機器が必要となる。

世の中が大きく変わる

テレワークは、自由度が高いことから管理の仕方やセキュリティー対策など、検討、解決すべき課題はある。
高齢の経営者がITに対応できていないといった問題もある。
こうした理由で、日本でのテレワークの普及がなかなか普及しなかったのだが、人と接することに制限をかけられる状況下では、テレワークを導入せざるを得ないというのが現実である。

テレワークを導入すれば、通勤などで外出する機会が減る。
オフィスでの勤務が減ることで、通勤のための交通機関の利用が減少、駐車場の利用も減るだろうから企業にとっては経費節減効果も期待できる。
自宅にいる時間が増えることから宅配や食材を提供するスーパーなどの需要も見込まれるし、手軽に食べられる冷凍食品や缶詰などの需要も伸びるだろう。ネットスーパーの市場も拡大する。
一方、オフィス近隣の飲食店やオフィス向けの弁当の需要なども減る。
また、外出の機会が減るのであれば、交通費をはじめ化粧品の需要やスーツの需要も減少する可能性がある。

時代が大きく変わる時には、転換点となることが起きる。
今回の新型コロナウイルスは、我々の生活やビジネスの在り方が様変わりする程のインパクトを与えている。
テレワークの普及は、仕事の在り方も変えることになる。
テレワークの環境が整えば、社内の様々な打合せが自宅や外出先でもできるようになる。
経費の精算などでも電子決済が進むだろう。
企業同士のビジネスでも、新規のアポイントを取る際や営業提案までもウェブ会議システムを使って、直接会うこともなく行えるようになるだろう。
大手企業をはじめリスクに敏感な企業は、面談よりもウェブ会議システムを使うようになるだろうから、取引先や関係先は必然的にウェブ会議システムを導入しなければならなくなる。

そのようなことが当たり前になれば、移動時間が大幅に削減され、営業の機会を増やしたり、顧客へのフォローにより多くの時間を割くことができるようになる。
生産性と効率性が高まることで、これまでよりもずっと少ない人数で会社を運営できるようになる。
そうなれば、人手不足で人材確保に悩まされてきた中小企業にとっては救いとなる。

IT化へ

IT化への投資と活用がこれからの中小企業にとっては避けて通れない道であるのだ。
IT化に乗り送れた企業の多くは、今後、淘汰されていくことになるだろう。
AIやICTの普及は、ビジネスの仕組みすら変えてしまおうとしている。
それが、新型コロナウイルスに対抗する動きのなかで、いっきに加速するはずだ。
新型コロナウイルスの収束時期については未だ予測がつかないが、感染拡大がおさまり様々な制限がなくなる頃には、以前とは大きく環境が変わっているかもしれない。

だから、今、この時期にITと経営について学ぶ機会を設けたり、組織を束ねる各部署のリーダーたちの研修を行うなど内部体制の強化を図るべきだろう。
また、顧客開拓や顧客との打ち合わせ、さらには、人材採用についてもウェブを活用する時代に入ることを考えると、今のうちに準備しておくことも必要である。
感染拡大が収束してから取り組んでいては、ライバル企業に一歩も二歩も遅れをとることにもなりかねない。

というのも、IT化は時代の流れの中での必然となっており、IT化への取り組みが遅れると経営効率が悪いだけではなく、企業イメージやブランド力の低下を招く恐れもある。

経営者は、こうした時代の流れの変化をいちはやく、的確にとらえる力を持ち合わせていなければ、経営判断を見誤ることになり、企業としての存続が危ぶまれる厳しい時代になるのだともいえるだろう。

今回のコロナ騒動は、経済的に大きなダメージを与えている。
さらに、収束時期がはっきりしないからという不安もあり、経営者にとっては難しい経営判断が続くかもしれない。
しかし、こうした時期でも、騒動がおさまった後には大きく飛躍できるように準備を進めている経営者もいる。
与えられた環境で、これからを見据えた戦略、戦術を研き、次のチャンスに備えたいものである。

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