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『伊勢神宮と出雲大社「日本」と「天皇」の誕生』

日本神話には「国譲り」という、ちょっと不思議な話がある。
天界を治める天津神・アマテラスの孫、ニニギが地上に降り立ち、地上を治める国津神・オオクニヌシより地上の統治を譲り受けるという話である。
オオクニヌシは国を譲るにあたり、自分が隠居する宮殿を建ててほしいと願い、そうして建てられたのが出雲大社といわれている。
こうして地上の政治を司るのは、アマテラスの子孫たる天皇家となり、一方、霊界を治めるのは国津神、すなわち出雲大社の神々となった。

しかし、なぜ大和王権は伊勢神宮で皇祖神・アマテラスを祀る一方で、国津神を祀る出雲を必要としたのか。
伊勢神宮のアマテラスを最上に置いただけでは不十分だったのだろうか。

そもそも皇祖神・アマテラスを祀る伊勢神宮はいつ誕生したのか。
実は伊勢神宮の記述は『古事記』にはない。
アマテラスが伊勢神宮に鎮座することは『日本書紀』ではじめて登場する。
太陽を信仰する日神信仰については『古事記』からも読みとれるが、アマテラスが伊勢神宮に鎮座することは『日本書紀』ではじめて語られるのだ。
このような『古事記』と『日本書紀』の違いのなかに、古代日本の宗教観、日本の国家としての起源を読み解く鍵が眠っているのかもしれない。

民俗学と文献史学に考古学を統合して、日本の国家基盤成立の背景に迫る本書。
『日本書紀』編纂から一三〇〇年を迎える今こそ、ぜひご一読をおすすめする。

(株式会社梓書院 前田 司)

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