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漢方をベースにネット通販と実店舗で新しい市場を創造

新型コロナウイルス感染拡大防止のために自粛ムードが漂う六月中旬、福岡市中央区警固一丁目に複合商業施設「カイタック スクエア ガーデン」開業。
漢方関連商品のネット通販を手掛ける株式会社ハーバルアイが漢方カフェを出店し、注目を集めている。
漢方のネット通販と実店舗の展開で新たな市場を創造する漢方ベンチャー社長の橋口遼氏に話を聞いた。

漢方茶と薬膳料理の漢方カフェを出店

―まずは、カイタック・スクエア・ガーデンに一階にオープンした漢方カフェ「コペルタ」の特徴から聞かせてください。

橋口 「Coperta(コペルタ)」とは、イタリア語で毛布を表わします。
漢方が身体に効いていくさまを、毛布がやさしく包み込むイメージに重ねています。
コンセプトは「薬膳で心と身体を整える」。
そんな思いのもと誕生したオーガニック漢方カフェで、薬膳に特化した漢方ブレンド茶と料理をメインにご提供しています。

漢方茶は、その日の体調や季節に合わせて選んでいただけるよう定番のブレンド茶をご用意していますし、ご要望に合わせて調合することもできます。
料理も、漢方薬剤師が漢方・中医学の基礎である陰陽五行学に基づいたレシピを開発、それをシェフが再現しています。
また、ご家庭でも薬膳料理を味わえるように、テイクアウト販売も行っています。

―オープンされて一ヶ月余が経ちますが、お客さんの反応はどうですか。

橋口 若い女性を中心に、中高年の男女まで幅広い層のお客様にご来店いただいています。
やはり、漢方茶の売れ行きがいいですね。既にリピーターさんが増えています。
新型コロナウイルス感染防止への対応として、密になりやすいディナーの集客を控えていましたが、ネット広告などでの集客も始めましたので、これから食事の需要が高まると見込んでいます。

飲食一号店は、おかゆ専門店

―食事のメニューはどのようなものですか。

橋口 「黒酢あんからあげ(玄米酵素ご飯付き)」や「薬膳炒飯」「薬膳麻婆豆腐(玄米酵素ご飯付き)」「薬膳トマトカリー」などに加えて、「かぼちゃのチーズケーキ」やアイスなどもそろえています。
また、鶏白湯と自家製麻辣スープの二極鍋で楽しむ「火鍋コース」もメニューに加え、女性客を中心に人気が高まっています。

―客単価はどのくらいですか。

橋口 お茶を目的に来られるお客様も多く、一七〇〇円~一八〇〇円ぐらいですが、ディナーの需要が増えるでしょうから、客単価は上がると見込んでいます。

―薬膳は、人気が高まってきているようですね。

橋口 コペルタは、当社の直営としては三店舗目となります。
一号店は、二〇一九年一〇月に、福岡市博多区須崎町にオープンした「おかゆや」です。
薬膳おかゆ宅配テイクアウト専門店として、第二類・第三類医薬品と薬膳料理のデリバリーサービスを業界で初めて手掛けました。
一号店が軌道に乗ったことから今年三月二七日に二店舗目「NENEN(ネネン)―薬膳と花―」を出店しました。
福岡市東区香椎照葉に開業した「アイランドアイ(island eye)」内です。
薬膳カフェにフラワーショップを併設している店舗です。
この店舗もオープン時が、新型コロナウイルス感染拡大防止のための自粛期間と重なったため、その間はテイクアウトとデリバリーで対応しました。
今は、本来の営業スタイルに戻っています。

―FCも出していますね。

橋口 東京の代官山に「おかゆや」を出店しています。

―新規出店の計画はありますか。

橋口 東京と大阪で一店舗ずつの出店を構想しています。
コペルタで始めた火鍋がうまくいったら東京の新橋あたりで考えたいですね。
今回のコロナ問題で、大勢で囲む鍋の需要は減少するのではないかと考えていますので、新規で出店する場合は一人火鍋を提供していきたいと企画しています。

漢方におけるニッチな市場の創造で勝負

―漢方をテーマにしたサプリメントの通信販売から事業をスタートされたわけですが、ここ一年で三店舗の直営店を出されました。
飲食事業に進出したのはどのような理由からですか。

橋口 漢方は元々、東洋医学の考え方がベースになっていて、漢方薬を扱うことができるのは、現状では薬剤師だけです。
漢方というと、薬剤師がやっている漢方と中華系に寄った薬膳に二分されていて、その中間が空白地帯になっています。
例えば、食事をする際に、健康に気を付けて、体によさそうだという理由でメニューを選ぶことがあります。
しかし、薬膳というと薬のイメージが強くておしゃれなカフェが少ない。
薬剤師が個人でやっているような店はありますが、当社のような漢方のベンチャーはほとんど見受けられません。
そこに市場があるだろうと考えて、漢方薬店が経営する漢方カフェの業態を開発しました。
また、医食同源という考え方でいくと、やはり漢方薬店がお粥や薬膳料理店を経営するというのは、ブランドイメージの統一と向上にもつながると考えます。
なにより、当社のスタッフが誇りに思えるというのが良いと思っています。
社員の健康に対する意識付けにもなります。

―新しい業態も考えられますね。

橋口 いい物件といい条件があれば考えますが、人がそろわないとできませんので、今は体制づくりに注力しています。飲食の基盤を固めたら、来年は通販の比重を強くしたいと考えています。

 

漢方の通販市場は伸びしろが大きい

―通販部門の売上のボリュームだけでなく、商品開発なども含めてということですか。

橋口 当社の売上はおかげさまで毎年順調に伸びており、今期は約一〇億円の売上を見込んでいます。
漢方の通販事業は伸びしろが大きな市場だと認識していますので、通販事業のさらなく拡大を図るため、新商品の開発、投入にも注力します。
近々、血糖値にアプローチする漢方薬を商品化します。
当社が独占的に取り扱う処方によって開発される商品です。
この商品が来年の売上に大きく貢献するものと期待しています。

―ネットでは、どのくらいのアイテム数を扱っているのですか。

橋口 通販事業は、「漢方生薬研究所」のブランドで展開しており、第二類医薬品や第三類医薬品、指定医薬部外品、サプリメント、遺伝子検査の販売を行っています。
取扱商品は、関節痛や手足のしびれを改善する第三類医薬品「アユミンS」や痔の症状を改善する第二類医薬品「ピーチラック」、胃の不快症状を改善する指定医薬部外品「生薬製剤イツラック」など一四種類です。
遺伝子検査の販売は、子供の隠れた能力や肥満のリスク、薄毛のリスクを見つける三種類のです。
通販業界で、第二類以下の漢方に力を入れているところは少ないと思います。

―新たに参入してくる事例が増えるかもしれません。

橋口 新規参入が出てくるとは思いますが、薬店の許可が必要ですし、登録販売者を雇用しなければなりませんから、他のビジネスと比べれば参入障壁は高い方だと思います。

創業の発想は、自身の経験から生まれた

―漢方を軸に通販と飲食事業という独自のビジネスモデルを構築していますが、なぜ漢方をテーマにしたのですか。

橋口 私自身、小さい頃アトピーと喘息を持っていました。
母親が色々探しきては飲ませてくれましたから、漢方には馴染みがありました。
また、私の子供もアトピーで毎月、病院に通っていました。
毎回、予約をしていくのですが診察までに一時間、さらに処方してもらうのに一時間程待たされるわけです。
私は通販会社に勤めていたので、「通販で届けてもらえないものなのか?」と疑問を持ちました。
その頃、福岡の健康コムが厚生労働省相手にネットにおける医薬品の規制撤廃を求める裁判を起こして、勝訴しました。
その記事を読んで、ネットの医薬品、第二類以下が解禁になるかもしれないと思い調べてみると、一類以上の薬は宅配便で送ることはできず、薬剤師が直接届けなければいけないことになっていました。
薬剤師が届ければ通販も可能ですが、宅配を行っている薬局はほとんどありません。
さらに調べていくうちに第二類医薬品、第三類医薬品であれば薬剤師ではなく登録販売者が対応して、通販ができるということがわかったのです。
それが創業のきっかけでした。

―競合が少ない市場は先行者利益が見込める一方、認知度を高めるなど市場を創る大変さもあると思います。通販の会員数はどのくらいですか。

橋口 毎月定期で発送している会員数が一万五〇〇〇人程度です。
会員数、売上ともに順調に伸びてはいますが、まだまだこれからです。
ここ一、二年でやっと組織らしくなってきたと感じることができるようになりました。

漢方をやって良かった

―スタッフ数は。

橋口 通販部だけで約三〇人のスタッフがいます。
飲食を合わせると、パートさんまで入れて六〇名程になります。
漢方をやってよかったと思っています。
漢方は、漢方茶やクコの実、薬膳など幅が広いため、広く浅い学び方もできるし、中医学という中国の医学のように深く掘り下げる学び方もできます。
学んだことを現場に生かせて、自分が成長する喜びを感じられるというのは、働くうえで幸福度を上げることにもつながると思います。
通販は、例えば企画で何もないところからパッケージやロゴを考えて商品が出来上がって、買ってもらったお客様から「ありがとう」というフィードバックがある。
この一連の流れができます。飲食も同じだと考えています。

皆が実力を発揮できる環境づくりを追求

―社内の雰囲気がとても自由で明るく感じます。会社の将来像をどのように描いていますか。

橋口 漢方は勉強したらその分、ちゃんと結果が帰ってきますから。
みんなが実力を発揮できて、数字を追いかけるのも楽しいしいという感覚になってもらいたい。
そういう環境や仕組みを作っていきたいと考えています。
スタッフが生き生きと働けたらいいと思っています。
「いきいき」の定義は、自分の才能を抑えずに発揮できること。
働き盛りの一番成長する時期に、伸びていく産業や旬のビジネスモデルに乗ることは大事だと考えています。
テクノロジーの部分では今後、ECとリアルが一緒になってきます。
漢方と薬膳は勉強する程深くなるし、もっと違う形の表現をしようと思ったらたくさんできるビジネスなので、惜しみなく追求していきたいと思っています。
そのために、メインとなる通販の売上をしっかり伸ばしたい。
そして、国内だけでなく海外にも飲食店を一、二店舗出店できたらと考えています。
スタッフのやり甲斐や働きやすさを追求し、海外留学したいという人をサポートできる仕組みも作りたい。
そのために、二〇年、三〇年先を見据えてしっかり投資もできる体制を作っていきたいですね。

―以前なら、売り上げをより多く上げる企業が良い会社だというような数字至上主義的な考え方を持っている経営者が多かったように思います。
しかし、SDG’sなどへの関心が高まるなど、売上高や利益率といった数字だけではなく、働く人たちの幸福度の追求や社会貢献などを重視する若い経営者が増えてきたように感じるようになりました。

橋口 そうでなければ経営も難しくなると思います。
SNSの普及で、何かあるとすぐに広がります。
評判が悪い企業には人材は入ってこなくなるでしょうから、経営自体が難しくなります。
社内外を問わず、誠実さはこれからの企業経営には欠かせないことだと思います。

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