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『パルプ・ノンフィクション 出版社つぶれるかもしれない日記』

出版不況と言われて久しい。
実際、一九九六年をピークに出版市場の右肩下がりが止まらない。
二兆六五六三億円あった紙の出版物の市場は、一兆二三六〇億円に、二万二千店あった書店は一万二千店を切るに至った。
電子ブックの市場は成長を続けているが、出版市場全体からすると、その構成比は二〇%程度にとどまっている。

本は他のメディアに淘汰されてしまうのか。
出版社はその役目を失い、消えていってしまうのだろうか。
この状況のなか、二〇〇六年に創立された出版社・ミシマ社は、「原点回帰の出版社」を標榜し、新興の出版社ながら、全国にファンを持つまでに成長してきた。
そんなミシマ社の社長、三島邦弘氏が出版不況のなかで悶え、挑戦し、打ちひしがれ、そしてまた出版社の可能性を信じて立ち上がり挑んでいく奮闘記が本書である。

成長産業にあって斜陽産業にないもの。
それはマグマのような熱い想いと衝動なのかもしれない。
出版業界に危機感や焦りはあれど、本が好きで好きでたまらない、世界の片隅で宇宙船をつくっているような情熱とわくわく感が失われてしまっているのではないか。

出版社としてどうあるべきか。
組織としてどうあるべきか。
著者のマグマのような熱にあてられ、自分自身の心にも火が点くことを感じられるだろう。
出版業界に身を置く方はもちろんのこと、経営者をはじめ、すべての働く人に読んでもらいたい、燃えるような一冊だ。

(株式会社梓書院 前田 司)

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