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109.『うそつきのつき』

今やすっかり「新しい便利」や「都合がいい」生活が体に馴染んできた。
しかし、どんなに状況が変わろうとも一人では生きてはいけないし、仕事は一人ではできない。
感情の流通はなくならない。
だから、言葉による意思伝達の課題は永遠だ。

この解決の糸口を、私たちは歴史や哲学から学んできた。
その中に、師が弟子の悟りを推し量る一挨一拶がある。
挨拶の語源であり、人の成長を促す良質な問いの掛け合い禅問答のことだ。

仕事を通じて社員の幸せな人生をサポートすることが企業の役割ならば、この問答は禅寺同様に組織にあったほうがいいと考える。
TOPは、どのように幸せになるか働き方を理念に示し、その時々のシーンにおいて考え方を伝え、問いをかける。
自ら考え、考えたことを文字(言葉)にして発し、共有する。
その共有した答えを理念に沿って行動にする。
この流れが滞らずスムーズに動いていることが望ましいが、現実には声にしない人が多い。
なぜならそこには、不満、不安、そして疑いという感情をはらんでいることもあり、うかつに言葉にできないからだ。
こうした場合に備えて、そこで、絵本のメタファを借りて、自分たちを俯瞰し、適切に伝えるためのトレーニングを日頃からしましょう!ということがこのエッセイの目的でもある。
「そっか、課題はみんなで考えるんだ」と思える安心安全な環境づくりができるツールだからだ。

今月の絵本の内容は、まん丸の黄色の顔の上にハットをかぶり、燕尾服(に見える)を着たおじさんの、駄洒落集といっても過言ではない。
読んでみるとわかるが、この滑稽さ、最初はわからない。
例えば、「このおじさんはわらいません。ウサギが、ウと サギに いばっていても」。
最初はなんのこっちゃだ。
しかしすべての頁を何度も読むとこれは隠喩なのだと気づく。
隠喩を超えて風刺だと思える。
描かれているのは私たちには見慣れてしまった世界の不可思議であり、ニュースでも見た光景だ。
そして、最後は、「まんげつとみかづき。どちらがうそつき」。
ここで笑わないおじさんは初めて笑い、自分はうそつきだと正体を明かす。
まるで、「これ以上の真理を考える駄洒落はないぞ、わかるかな~~」とあざ笑っているがごとく。
駄洒落とは、実は禅問答なのかもしれない。

こうして、絵本の中には良質な問いがある。
その問いをたどるプロセスが、絵本に学ぶ仕事術。
さあ、さあ、組織に、どんな問いをかけましょうか。

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

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