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『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』

2024年度に発行される新1万円札の顔に、「日本資本主義の父」渋沢栄一が選ばれた。
渋沢栄一が日本に大変革をもたらした偉人であることは疑いようがない。
しかし、なぜ「日本資本主義の父」と呼ばれているのか。
その理由を説明できる人は多くはないように思える。

そもそも資本主義とはなんだろうか。
資本主義とは、平たく言えば自由主義経済であり商業立国である。
では、資本主義以前の世界はどういう世界だったかというと、君主制が敷かれた身分社会である。
厳しい身分社会が敷かれた江戸時代において、特に武士の間では「商売によってお金を稼ぐことは悪行だ」、という考え方が深く浸透していたという。
その背景にあったのは、江戸幕府公式の学問である「朱子学」であった。
朱子学は孔子の儒教から分派した学問であるが、学問でありながら武士の基本的な思想を形作る「宗教」でもあった。
その国家公式の学問(宗教)である朱子学が、「商売は卑しい」と二百数十年教えてきているのだから、商業立国すること、海外との交易によって富を得ることへの抵抗は根強かったという。

渋沢栄一が著書『論語と算盤』で成し遂げたのは、そういった武士たちの商売への抵抗を和らげ、近代化のために大いに経済活動を行うことを是とした大パラダイムシフトであった。
と同時に、経済に倫理観を持ち込むことによって、世界でも類を見ない経済国家・日本ができあがったのである。
日本の歴史を「お金」という側面から見ると、意外なことまでいろいろと見えてくる。
『論語と算盤』を語る前に、ぜひご一読をお勧めする。

(株式会社梓書院 前田 司)

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