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『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか』

「チンパンジーは人類の祖先である」。
「進化によって現在の人類は最も脳が大きくなった」。

いずれも間違われやすい誤解である。
チンパンジーは現生人類に最も近縁な種ではあるが、チンパンジーから人類が進化したのではない。
約700万年前にチンパンジーと人類の共通祖先から分岐し、それぞれ進化して今に至るのである。

さらに、人類は進化とともに確かに脳は大きくなってきたが、実は現生人類よりも絶滅したネアンデルタール人のほうが脳は大きかったし、身体も大きかった。
それなのになぜ、ネアンデルタール人ではなく、我々ホモ・サピエンスが生き残ったのであろうか。

我々ホモ・サピエンスが生き残ったことにいくらかの理由はあるが、それでもやはり「たまたま」生き残ったという偶然性は否定できない。
そして「たまたま」生き残った我々がいることによって、「たまたま」絶滅した他の人類がいたのだ。
人類は「仕方なく」進化してきた歴史を持つ。
肉食獣に襲われる危険のある草原より、森林のほうが安全で食料も安定していた。
しかし、より力の弱い人類の祖先は森を追われ、仕方なく疎林にやってきた。
生き残るために食料を分け合い、なんでも食べるようになり、肉食獣に襲われようとも、それ以上に多産であれば種として生き残ることができるため、「8勝7敗」の戦略で生き残ってきた。

なんともいじらしい生存戦略である。
持たざる者だからこそ、生き残ってきた人類の進化の歴史を辿ることは、我々人類にとってなにが大切なのかという、人生哲学を教えてくれるようである。

(株式会社梓書院 前田 司)

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