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116.『ふしぎなたね』

私は、中小企業の組織づくりのアドバイスを、企業に密着するスタイルで行っている。
具体的には、経営者の「社員の幸せを願う気持ちが伝わっているだろうか?」という問いと、社員の「経営者は自分たちの声を聴いてくれているだろうか」という対局の声を通訳したり、その小さな溝に橋をかけたり、職場にあふれる「通じなさ」の解決のために仕組みづくりをしている。
その時「例えばね」と、誰もが知っている寓話や絵本をメタファとして用いると、言葉の共通理解が高まり、言い違い・聞き違い・思い違いが減っていく過程に立ち会ってきた。

そこで、このページでは、職場のコミュニケーションに役に立てていただくことを願って、そのメタファとして使っていただく絵本をご紹介している。

今月は、建築家としても名高い安野光雅さんの「ふしぎなたね」を紹介したい。
お話は、怠け者の男に、仙人が種を授けた。
焼いて食べれば1年間何も食べなくてもおなかはすかないし、植えれば1個の種で翌年には2つの種ができるという。

1個を食べて1個を植える。
これを続けたある年、このままでは何にも変わらないことに気付く。
そこで1年だけ空腹を別のもので満たすことにして2つ植えた。
いいことを考えたのだ。
翌年は4つの収獲。1つを食べて、残り3つを植えるとその翌年は6つの種。
内1つを食べて・・を繰り返す、数の計算の話が続く。
やがて、家族ができ、さらに収穫が増えまわりに分け与える。
10年目蔵も建つようになったころ、突然大きな災害で、すべてのものがきれいに洗い流され、結局残った10個の種で再出発する。

この示唆に富んだ内容にはいくつもの学びが読めてくる。
その中で、私が最も心に残ったことは、この時代に生き残るために必要だと思えた箇所。
それは、男が「このままでは何も変わらないと考え、その年は2つ種を植え、飢えを別のもので満たした」ここだ。
さらに、続くなら、この時を境に種の数は増えていくのだが、災害にあう。
そこからわずか手持ちの資源で立ち直る。
この部分。まさに、今のことであり、慣れとは怖いという教訓ではないかと思った。

この困難な時代を生き抜くためにどうしたらいいのか、現場の声にじっくりと耳を立てて聴いていくことで、新たな問いが生まれ、そこからの対話が懸け橋となり、変化を生み出すことができるのではないだろうかと思った。

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

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