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事業を引き継ぎ25年で3倍の事業規模に成長 「任せきる経営」でさらなる飛躍を目指す

電設資材卸売の九州最大手として九州一円で事業を展開するカンサイグループ。
社長の忍田勉氏は、父親から引き継いだ事業を25年で3倍、売上高で300億円超の企業グループに育て上げた。
また、スポーツ文化の発展に寄与するなど社会貢献にも積極的に取り組む。
こうした経営が評価され、公益財団法人経営者顕彰財団が主宰する「第48回経営者賞」を受賞した。
「継続は力なり」を自身の信条とし、「地域への恩返しがしたい」と社会貢献にも力を入れる忍田勉社長に経営者としての企業経営や社会との向き合い方を聞いた。

自社イベント「カンサイフェア」を40年も開催

―この度、公益財団法人経営者顕彰財団が主催する「第48回(2020年度)経営者賞」を受賞されました。
まずは受賞の感想から聞かせてください。

忍田 当社は、1954(昭和29)年に父が創業し、67年にわたって福岡を拠点に「カンサイ」の名前で商売をしてきましたが、これまでの活動を地域から認めていただいたのだと、ありがたく感じています。

―今回の表彰で評価された項目が幾つか挙げられていますが、その第一番目に取引先などを集めた大規模なイベント「カンサイフェア」を40年間実施してきたことが挙げられています。
このフェアは、どのようなものですか。

忍田 当社のメインとなる業務は住宅やオフィス、商業施設、工場などのあらゆる空間で使用される電気設備、それらの電気工事に必要な材料を電気工事会社に卸すことですが、父は工事会社だけに商品をアピールするだけでは限界があると感じたようです。
そこで、取引メーカーに相談して工事会社の商売につながる場として住宅設備や空調設備、電気設備機器などを揃えた大規模な展示会を開催するようになりました。
これが「カンサイフェア」の始まりです。

工事会社が自社のお客さんを会場に招待し、そこでメーカーが展示した商品を見ていただき商売につなげる。
フェアのサブタイトルに「共創展」と入れているのは、共に創造する展示会であるという意味です。

―工事会社にとっては有り難い話ですね。

忍田 ところが、当時は工事だけやっていれば儲かるからという考えが一般的でした。
また、顧客を連れてきても自分たちを飛び越えてダイレクトに売られるのではないかと間違った認識を持たれるようなこともあり、最初は思うようにはいかなかったようです。

それでも、回を重ねるに従って私どもの考え方が浸透し、最近は自社の顧客を大勢フェアに招待し商談をするという形が出来上がりました。
フェアを開催する三日間は店を閉めて、全社員が会場でお客様の対応をするというようなところもあります。

三日間で三〇億円

―ひと口に40年といっても、それを続けてこられたことに驚きます。

忍田 私は、「継続は力なり」という言葉を座右の銘にしています。
続けていくことが力になりますし、どういう状況であっても続けるということが大事だと考えています。
極端かもしれませんが、フェアはお客様が来られなくても開催する覚悟で続けました。
台風など、いろんな困難に直面し開催を危ぶまれる時もありましたが、「とにかくやる」と一途に続けてきました。
そのことが、定着した一番の要因だと思います。

「カンサイフェア」は例年、金、土、日の三日間開催します。
期間中、九州全域から延べ2万4,000人程がお見えになり、フェアでの成約金額は30億円に上る一大イベントです。
メーカーさんも、「カンサイの展示会は一度、見に行った方が良い」と宣伝してくれますので、近年は全国から同業者が視察に来られます。
私どもも、視察に来られた方には、「こういうやり方が良いですよ」とノウハウをオープンにしています。

―ノウハウを公開するのはリスクもありせんか。

忍田 ノウハウをオープンにしても、一朝一夕にできるものではないという自負がありますから問題ありません。

ウェブとリアルの二刀流

―昨年はコロナ禍で、ほとんどの大型イベントが中止や延期を余儀なくされました。
「カンサイフェア」も中止されたそうですね。

忍田 コロナ禍で展示会は中止せざるを得なかったわけですが、新しい試みとして電材業界では珍しい本格的なオンライン展示会「webカンサイフェア2020」を開催しました。
参加希望者にIDとパスワードを発行し、当社サイトからウェブ展示会の空間に入っていただくと、入場者はウェブ上で様々な展示商品を見ることができるというものです。
初めての試みでしたが、大変好評をいただきました。

ウェブ展示会を実施したことで得られた成果もありました。
当社は電気工事会社など約4,400社と取引していますが、その大半のアドレスを取得することができました。
当社にとっては貴重な財産となります。

―取引先とのホットラインが強化されたということですね。
まだ、コロナの収束が見えない状況ですが、今後のカンサイフェアの運営については、どのように考えていますか。

忍田 福岡も三度目の緊急事態宣言が発出されるなど、感染収束のめどが立っていない状況を考えると展示会の開催は難しいと覚悟はしています。
それで、今年は「webカンサイフェア」を7、8月と2カ月間開催します。
実際にフェアが開催できる状況になった場合は、ウェブ展示会を開催しながら3日間はリアル展示会を開催しようというものです。

今年に限らず、今後はウェブとリアルのどちらでも対応できるような形で開催していこうと考えています。
マイナスの影響もありますが、コロナがなかったらこのような形での開催は考えつかなかったでしょうね。

社会貢献事業にも積極的に取り組む

―プロスポーツのスポンサーとプロを目指すゴルファーのためのトーナメントを開催するなどスポーツ文化を支えていらっしゃいますが、どういった考えからこのような社会貢献事業を始めたのですか。

忍田 父親は奈良、母親が京都と両親ともに関西の出身ですが、縁あって福岡で起業して以来、「関西(カンサイ)」の名前で商売をさせていただきました。
平成26年に中核企業の株式会社カンサイが設立60周年を迎えたのを機に、記念事業を検討した際、これまでお世話になった地域への恩返しがしたいと考え、ソフトバンクホークスのスポンサー試合を開催しました。
その後もソフトバンクホークスやアビスパ福岡の公式スポンサーをお引き受けしていますし、プロを目指すアマチュアゴルファーのための「カンサイカップ」を開催しています。

令和2年11月からは商工会議所の副会頭を務めていますが、これも地域に認めていただいたという思いから、地域へ恩返しができればとお引き受けしました。

任せきる経営に徹す

―先代から引き継がれて20年余でグループ売上が300億余と3倍以上の規模に成長しました。
忍田社長は事業を引き継いでから会社の将来像をどのように描いてこられたのですか。

忍田 創業者である父が経営していた頃は、創業者が様々な案件を決断し強力に組織を率いていかなければ上手くいかない部分が大きいと理解していました。
ただ、それだけでは、会社をこれ以上大きくすることは難しい。一人ひとりが、自分で考え行動できるような仕組みと社風をつくり上げていくべきだと考えていました。

ですから、私が事業を引き継いでからは、そのことを心掛けて経営してきました。
社長に就任した当初は、今のような規模にしようとは思っていませんでしたが、今ではグループ企業も増え、グループ内の会社を率いる若い社長たちが、自分で考え経営し成果を上げています。

―グループ企業は13社にまで増えましたが、グループ企業の社長にもかなり裁量を任せていらっしゃるようですね。

忍田 かなりではなく、すべて任せています。
近年はM&Aの相談が多く、お引き受けすることもあるためグループ会社が増えていますが、当社からは社長を出すことはありません。
先方に「会社から社長を出せますか」と尋ね、社長をやる気のある人がいると言われれば、その人に社長を任せます。しかし、そうした人がいない場合は、話を引き受けないようにしています。

グループ会社の経営は各社の社長に委ねます。
ですから、契約する時には先方の会社に顔を出しますが、それ以降は顔を出さないようにしています。
社長が親会社の顔色を見ながらでなく、自分たちで思い切った経営ができるようにするには、私ではなく自社の社長の方を向いてもらうことが大事だと考えています。
ですから、グループに入ってもらったからといって社名を変更することもありません。

グループ会社がそれぞれ独立していますから、これからも独立して次の社長を出し、営業所を作るなどして発展してくれればいいと思っています。

「社長をたくさん出したい」

―確かに、それぞれの会社が育んできた企業文化があります。それを大事にしようという考えですね。

忍田 うちから社長を出して「ああしろ、こうしろ」と指図しても反発を招くだけです。
「自分たちの会社だから、給料は自分たちで稼ぐ」という文化を浸透させたい。
それが、グループの力を強くすることにもつながります。ホールディングス制を採用していますから、資金的な支援はします。
資金繰りの負担は軽くなり、利益も出しやすくなると思います。

私は、社長をたくさん作りたいと考えています。
部長や副社長ではなく、社長になる機会をつくりたいのです。
副社長と社長ではまったく違います。
社長にならないと、自分で思い切ったことはできませんし、社長のつらさや楽しさも分かりません。
ホールディングスでは、社長が自分で考え、思い切った決断や展開ができる環境を整えることができます。
また、そうした環境が社長を育てるのだと考えています。

―コロナ禍で先行きが見えないといわれるようになりましたが、これからの時代を生き抜くためにリーダーに求められる力は何だと考えますか。

忍田 経営者はいつの時代でも先を見る目を養うことが必要だと思います。
そのためには好奇心が強く物事に敏感であることだが大事です。
人の話を聞くときもそうです。
話の内容を自分に置き換えて咀嚼できるか。
常に自分の会社のことと関連付けて考える習慣を身にける努力が必要ですし、そのような姿勢を持っていなければ、新しい情報も入ってこないし、新しいこともできません。

話すときも好奇心を持って話をすることです。
上手い下手ではなく、自分の意思をどれだけ人に伝えることができるか。
伝える情熱と相手の言っていることを理解する理解力が求められると思います。

―経営者として物事の本質や時代の流れを見極める感性を磨くためには、細かいことをいつも気に留め、考えることが訓練になるのでしょうね。

忍田 社長というのは、細かくて神経質ですよ。
ちょっとした数字にも敏感でなければいけません。
私はサラリーマンを辞めて会社に入りましたが、父からは厳しく指導されました。
配達から営業、管理などすべての業務を一から経験させられました。
そのおかげで、それぞれの業務について学びましたし、担当者や責任者の苦労もわかります。
経営者としての基礎ができたのは先代のおかげだと感謝しています。

―今後の展開については、どのように考えていますか。

忍田 新型コロナウイルス感染拡大によって変わったこともありますが、これからの時代にデジタル技術や持続可能な仕組みづくりはさらに必要になります。
カンサイグループとしては、こうした時代の変化に対応しながら、「電気設備とエネルギーの総合商社」として、「電化」を通して皆さまのビジネスや生活を豊かにする役割を担っていきたいと考えています。

名 称  株式会社カンサイホールディングス
住 所  福岡市博多区東比恵3-32-15
TEL.092-481-9101
創 業  1948(昭和23)年4月
設 立  2013(平成25)年10月
代 表  忍田 勉
資本金  9,600万円
事業内容 電気設備資材、住宅設備機器、省エネシステム商品の総合卸売、省エネコンサルタント事業
グループ 事業会社12社、関係会社1社
URL   http://kansaihd.co.jp/

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