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客の為になるものを売れているか?

「無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ」。

 

これは、「近江商人商売十訓」の五番目に書かれている言葉である。

ことさらに個の利益が重視され、仲間や組織の存在が薄くなってしまっているように感じる今日、改めて考えさせられる。

 

「無理に売るな」とは、自分の都合で押し付けるなという意味だろう。

商いをしていれば、無理にでも数字を上げなければならないことがある。

これを守るだけでも簡単ではない。

コロナ前の企業評価は、売上高や利益を幾ら上げたか、利益率はどうかといったことが優先されていたようだ。

そうした評価を重視する「グローバルスタンダード」という文化、風土が違う経済圏の論理に振り回されてきた結果かもしれない。

 

日本の商人はできるだけ薄い利益でも長く商いを続けるための戦略を練り、実践してきた。

十訓の四番目に書かれている「資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし」という言葉にその考えが表れている。

「客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ」という言葉も商いの原点に立ち戻るための言葉である。

SNSなどの普及で、個人が情報を発信する媒体を持てるようになったことから、情報の価値を担保することが難しくなった時代、お客の希望は尊重しながらもプロとしてお客に必要な、役に立つものを提案、提供することが使命であるという商いの根本を教えられている気がする。

 

特に、持続可能な社会や環境づくりが叫ばれるなか、お客の為になるものを売れという言葉は、将来を見据えて物を考える必要性を説いている。

近江商人商売十訓は、松下幸之助氏が語っていたことをまとめたものの一部だという説もあるが、商いに携わっている者にとっては、決して忘れてはならない教えであるし、これからの時代を生き抜くために学びたい教えでもあるといえる。

 

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