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『ZOOM』

 

その本に限っては、表紙から読んで、もう1度裏表紙から読み直す。

これを、セットで行いたくなる、文字のない絵だけの本。真っ赤な表紙に、黄色の背。見返しは深い黒。かなりキレのいい装丁だ。

 

さらに、扉を開けると、左は照明の光を柔らかいゴールドに変えて反射する真っ黒の光沢紙。その右半分に絵がある。

 

1ページ目は、赤いギザギザの突起物のようなものが描かれ、次のページでそれは鶏冠であることがわかる。

さらにめくると、窓から2人のこどもがその鶏を眺めている場面になる。

近すぎては掴みきれないものも、引いてみるほどに絵の意味が見えてくる。

さらにさらにズームアウトを繰り返して巻末では、宇宙に飛び出し、さらに何光年も先から小さな点となった地球を見ている絵となる。

 

いったん本を閉じて、裏表紙からめくりなおす。

小さな点が1つ。次のページにはそれが地球だとわかる大きさにズームイン。

さらに進めると、海原を飛ぶ1機の飛行機。

パイロットが見つめる先には南の島の原住民がいる。

もっと寄ってみる。そこに届けられた手紙の切手をズームイン。

切手の中では、一人の男が荒野テレビを見ている。

そのテレビに映る都会の風景。

そして、その中の・・と、この繰り返しで、鶏冠にまで寄ってみることができる。

 

仕事の中でもズームすることが必要な場面がある。

それは、「どこを見てるの?」「今まで何を見てたの?」「今ごろわかったの?」という言葉に現れたりする。

見ようとしなければ見ることはできないし、見ることができても、自分には関係ないものとして簡単に見なかったことに変えてしまう。

面倒くさいと思う心や、「そこまで必要?今何も問題ないよね」の考え方にくっついてる眼には、肝心なものは映らない。

 

逆に、寄りすぎてしまうとその物自体の本来の姿がわからなくなってしまう。

ビジョンという全貌がわからないばかりに、今の仕事や作業の意味を見失ってしまうパターンだ。

 

この絵本を使って、何度も何度もズームを繰り返していると、ふっとそんなことに気づいたりする。

 

あとがきの谷川俊太郎さんの『ズームするのは人間の、眼に支えられたあくなき好奇心と想像力だ』という推薦文と、『眼は遠ざかる。目は近寄る』という詩にもあるように、眼は頭と心についているのだから。

さて、どう見えるか試してみてはいかが?

 

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

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