open

中央ユーラシアから世界史を見つめなおす

 

近年、世界の研究者が驚くような宗教画が続々と日本で発見された。

発端は、山梨県栖雲寺に所蔵されていた1枚の絵。これは当初、景教(キリスト教)画像だと論文で発表されて注目を浴びたが、実際は「マニ教」の宗教画であったのだ。

この発見を皮切りに、日本国内で次々とマニ教の宗教画が比定されていった。

 

マニ教は現在では完全に滅びてしまった宗教だが、4~5世紀にはローマでキリスト教最大のライバルとされたほど栄えていた。

その運び手となったのが、中央ユーラシアで覇権を握った東ウイグル帝国や、シルクロードを縦横無尽に飛び交い活躍したソグド人たちだ。

 

シルクロードというと、ユーラシア大陸の東と西をつなぐ1本の道のようなイメージを持つ方も多いかもしれないが、実際はユーラシア大陸の東西南北を結ぶ、「高級商品流通のネットワークであり、文化交流の舞台」であったという。

マニ教はそんなネットワークのなかで、キリスト教や仏教などから影響を受けて誕生した宗教であり、それらの宗教もまた、マニ教から影響を受けている。

もちろん、宗教だけにとどまらず、シルクロードの民たちは各地に様々な影響をもたらした。

「辺境」と思われがちな中央ユーラシアは、かつて世界をつなぐ舞台であった。

西洋中心史観から抜け出し、中央ユーラシアから世界史を見つめなおす画期的な1冊だ。

 

(株式会社梓書院 前田 司)

 

『シルクロード世界史』

森安孝夫/著

講談社選書メチ/刊

1,650円+税

よく読まれている関連記事