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日本の中世を見つめなおすと日本社会の源流が見えてくる

 

法然、親鸞、日蓮、一遍、栄西、道元……。

いずれも鎌倉時代に登場した宗教家である。

なぜ中世に集中して、これだけ多数の優れた宗教家が登場したのか。

これは本書の著者が研究をはじめるきっかけとなった、高校生の問いかけである。

その問いかけへの回答を探す過程で重ねた研究と論考が本書には収められている。

 

日本の中世というと、天皇中心の社会から武士中心の社会への転換、御恩と奉公に代表されるような、土地を媒介にした封建的主従関係の確立、といったイメージがあるように思える。

しかし、それはあくまで為政者とその家臣たちの視点にすぎないひとにぎりの為政者たちを支える、大多数の農民たちは、古代より搾取される被支配民だったのだろうか。

 

中世がこれまでの価値観や社会構造に変化が生じた転換期であることは間違いないだろう。

しかし、本書を読めば、一般的な「中世」のイメージがずいぶんと違って見えてくる。

それは中世に限らず、日本の原風景、日本社会の成立過程を考える意味でも非常に画期的な視点だ。

 

日本が決して元来均一的な国ではなかったこと、百姓は農民とは限らないということ、差別の萌芽が生れたこと、中世以前も商業が盛んであったことなど、本書は実に多様な視点を示してくれる。

我々がいかに固定観念に縛られていたかを実感できる一冊だ。

(株式会社梓書院 前田 司)

 

『日本中世に何が起きたのか 都市と宗教と「資本主義」』
網野善彦/著
角川ソフィア文庫/刊
880円+税

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