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『古井戸に落ちたロバ』

 

年寄りのロバが、じいさまに連れられて荷物を運んでいた。

きっと長い間こうして生活をともにしてきたに違いない。

この絵本の特徴である「余白」から想像する。

この絵本「絵・文」共にシンプル明快。

そぎ落とされた中の余白のマジックなのか、読み終わって心に余韻がリフレインしてくる。

 

さて、物語に戻ろう。

それは、あっという間の出来事だった。

ロバが古井戸に落ちた。

とてもロバの力で這い上がることも、じいさまの力で引き上げることもできない。

井戸からはロバの鳴き声が響いてくる。

 

助けたい。でもどうしようもない。

助けたところでロバが働けるのは長くはない。

じいさまは思案する。近くではこどもたちが遊んでいる。

このまま放っておけば別の被害がでるかもしれない。

じいさまは穴をふさぐことにした。

 

ロバは真っ暗な古井戸の底で助けを求めていた。

なのにパラパラと土が上から降ってくる。

どんどん降ってくる。

ロバは暴れ続けた。

疲れてあきらめかけたとき、ロバは自分の体の上にほとんど土が積もっていないことを理解する。

体の土を払い落として足で踏み固める。

何度も何度も。この絶望的な状況下でも最後まであきらめなかった。

 

ロバは生きている!

気づいたじいさまたちは夜通し土を入れ続け、夜が明けてやっと、ロバは古井戸から脱出できた。

うれしかったことだろう!じいさまは泣いている。

だがロバが選んだのは・・

 

この絵本を読んで『ふたりの老女』という物語を思い出した。

飢餓の冬、仲間から置き去りにされた老女2人の旅の話だ。

それは部族を守るための苦渋の決断だった。

だが2人はあきらめない。

これまで若い者に文句たらたらと不服を言い続けた日々を悔い改め、知恵と先人の教えで苦境を乗り越えることを選ぶ。

やがて部族も救えるほどの暮らしができるようになる。

 

この二つの古典は、国は違うが先住民インディアンの物語だ。

老いを言い訳にして人に依存しすぎても馬鹿にしてもいけない。

ましてや「自分の人生、人に決められたくない」という思いは捨ててはいけない。

 

このように、生きるための教えを物語にして継承できるならば、企業にそして家庭にある生き方の知恵を、物語変えることはできないだろうか。

未来を創る人たちへ感謝と勇気の気持ちを込めて、どんな「愛」を伝えたいか、この秋、じっくり自分に問うのもよいかもしれない。

 

有限会社ウーヴル(https://oeuvre.jp/
代表取締役 三宅 美穂子

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