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時代のニーズを捉え、グローバル化を推進し経営再建を果たす

 

立ち止まることは、現状維持ではなく衰退を意味する。
変化が激しい時代はなおさらである。
福岡外語専門学校は、今年119年を迎える老舗である。
創業当時は、女性を対象とした裁縫を教える学校として、戦後は国際化に対応できる英語教育など時代が求める教育を提供したが、
創業100年を迎える頃には生徒が激減し閉校の危機に陥った。しかし、グローバル化戦略で見事V字回復を遂げた。

 

創立100周年の老舗が学校閉鎖の危機

―100年以上の歴史を持つこちらの学校は、創業当時は裁縫を教えておられたようですが、外語専門学校に変化を遂げられました。
まずは、そのあたりの経緯を聞かせてください。

岩本
本校は明治35年に福岡裁縫女学校として創立しました。
いわゆる花嫁修業の学校としての位置づけで、当時のハイカラな女性が通う学校だったそうです。

時代が流れ、第二次世界大戦で日本は負け、大きな転換期を迎えました。
そのような時に、米軍基地となっていた福岡空港で、飛行機から降りてくるアメリカ人の様子を見た前理事長は
「これからは英語が必要になる」と思い、裁縫とは全く異なる外国語学校への転換を図りました。
この時の英語教育への転換は、時代の流れを的確にとらえた前理事長の英断だったと思います。

その後、大学や専門学校の数は増えましたが、日本が少子化時代に入り受験者数が減少、専門学校も非常に厳しい経営を強いられていました。
私が理事長に就任したのは、そうした時期でした。

 

―岩本理事長は前理事と血縁関係ではないそうですね。理事長を引き受けられた経緯について教えてください。

岩本

私は理事長としては3代目です。
この学校に来た2002年は、創立100周年を迎える記念の年でしたが、同時に学校の幕を閉じようとしていた時期でもありました。
生徒数はわずか二八人に減り、増収が見込めないなか借入金ばかりが増えていました。
そのような状態で理事長を頼まれたのです。

前理事長とは私の父が懇意にしていました。
父が九州ミノルタの社長をしていたこともあり、私は大学卒業後、ミノルタ(現在のコニカミノルタ)に在籍していました。
父の会社はミノルタの商品を学校に納めていましたので、前理事長とは仕事の付合いから懇意にさせていただいていたようです。

後継者がいらっしゃらず、ご本人が高齢だったこともあり学校の経営を引き継いで欲しいと相談を受けました。
それを父が引き受け、私が理事長に就任することになったのです。

 

―学校経営とは畑違いの世界から来られたわけですね。

岩本

学校経営に携わるにあたり、2つの道を考えました。
1つは学校の継続。もう1つは売却でした。
本校は立地が良いので、購入したいという申し入れを幾つかいただいていましたから、学校を取り壊してマンションを建てることも検討しました。
しかし、マンション経営ではとても膨らんだ借入金を返済できそうにない。
それに、学校を閉めるとなると、卒業生対応や事後処理で約3年間は経営を続ける必要があるため、収入がないのに費用だけがかさむことになります。

結局、続けるしか道はないという結論に達し、覚悟を決めました。
学校を続けるとなると、学生を増やさなければ収入が得られません。
そこで高校を回りました。
当時は、進学雑誌に載せるか、高校を回って進路指導の先生に当校の事を説明して、生徒に紹介してもらうという方法が一般的でしたから。

内部に対しては、夢やビジョンを描けなければ成長することはできないと思い、私なりの方針を出しました。
まず、英語はグローバル化が進むなか絶対必要となるものだから、英語教育は続ける。
さらに、本校で英語を2年学んだ後は国内や海外の学校に編入できる環境を作ろうと考えました。
そして、日本の少子高齢化や人財不足への対応、さらには、多くの世界の若者に日本をよりもっと正しく知ってもらう為に、外国人留学生の受入れ環境の整備も同時に始めました。
また、2008年文部科学省が日本のグローバル戦略の一環として策定した2020年までの「留学生30万人計画」も追い風でした。

そこで、自分で海外に行って留学生を呼び込もうと考え、最初は中国を訪ねました。

 

 

留学生受け入れが奏功

―なぜ、最初の訪問先を中国にしたのですか。

岩本

当時、日中友好協会の方から、中国では多くの日本企業が進出し日本語がブームになっているので、
日本語学科を作って中国に留学生の募集に行ったらどうか、と声をかけられたのがきっかけでした。
私は藁をもつかむ思いで日本語学科を申請して、中国に飛びました。

日本の高校をまわってもなかなか相手にされないのに、中国では熱烈に歓迎されました。
それで、最初は2人の中国人留学生から始まり、毎年倍々で増え中国人の留学生だけで200人程を抱えるまでになりました。
日本人の学生も合わせると学生数は230~250人に回復し、経営的にも安定してきたと感じていました。

 

―時代の流れをつかんだわけですね。

岩本

確かに中国からの留学生は増えましたが、次第に「中国からの留学生だけでいいのだろうか?」という疑問を抱き始めました。
もし、日本と中国との間で何か問題が起きたらどうするのか。
学校運営や国際事情という面から考えた場合、中国だけに頼ってしまうのはリスクがある。

先生たちは、日中友好条約を結んでいる以上、日本と中国が喧嘩することはないと主張。
妥協案として、当時、本校以外に福岡国際コミュニケーション専門学校を設置していましたので、ここで中国人留学生を受け入れ、
福岡外語専門学校は非漢字圏の学生を入れることで決着しました。

中国のルートを開拓したときと同じように、自分でベトナム、ネパール、インドネシア、モンゴルなどアジアを回りました。
その後、欧米からも留学生を募りたいと考え、欧米も回り、今は延べ52ヵ国から学生を受け入れています。

 

自ら現地に入りルートを開拓

―すべて、岩本理事長が回るのですか。

岩本

周りから見ると、無駄のように映ったかもしれませんが、自分で現地に行かなければ上手くいかないというのが私の考え方です。
歴史や文化の違う国の人を受け入れるわけですから、トップが現地に赴き、現地の人たちと信頼関係を築くことは非常に重要なことだと考えています。
現地の人と会って、食事をしながらいろいろな話をする。
これを何回か繰り返してみると、その人達がどのような人柄なのか、信頼できる人物なのかがわかります。

そうやって、受け入れる国は年々増えました。2013年に尖閣諸島問題が起き、中国人留学生がほぼゼロになりましたが、多国籍戦略をとっていたことで、被害を免れました。
多国籍化は今後も加速させたいと考えています。

 

―受け入れる国を増やすというこですか。

岩本

100ヵ国を目指しています。
当校では、目指すべき「4つの100」を掲げており、この100ヵ国はそのうちの1つです。
延べ52ヵ国の留学生を受け入れてきましたが、今後はアフリカや南米からも留学生を受け入れたいと考えています。
留学生として受け入れている国の数は、福岡の専門学校としては当校が一番ですし、国内でも珍しいと思います。

 

2つ目は留学生と日本人が交流できるように、年間100の交流イベントを開催することです。
例えば、今日がアメリカの独立記念日なら「今日はアメリカデー」ということで、ロビーでPRすることも回数に入れます。
ナショナルホリデーはその国ごとにありますから、それだけでもかなりの数に開催ができますし、お互いを知るきっかけにしてもらいたいと思っています。
そういう小さなイベントからバーベキューパーティーを開催したり、山登りやハイキングに出かけたりするなど、いろんなイベントを行います。

3つ目は、本校で学んだ学生が卒業後、大学の3年時から編入できる、また外国人留学生の受け入れ、更には交換留学が可能な100の提携校をつくることです。
国内の大学に加えてアメリカやイギリス、フランス、オーストラリア、タイ、中国、韓国など現在はまだ20校程度ですが、100の提携校を目指し拡大を図っています。

4つ目が学生の定着率を100%にする。つまり、ドロップアウトをゼロにするということです。

 

 

海外に出れば日本の良さが見える

―日本がグローバル化するためには、海外にもっと目を向けて欲しいですね。

岩本

1度、海外に行って外の世界から日本を見たら、日本がいかに良い国かということがわかります。
パスポートをみても、日本のパスポートは世界最強です。
ビザなしで世界191ヵ国に行けるパスポートですよ。
私が昔留学していた時代、銀行口座にしても、日本人というだけで開設してくれる。
アパートを借りる際も日本人は部屋で靴を脱ぐ習慣を持っているので、部屋が汚れないと歓迎されます。

これからの日本の若者は、海外の人たちと競争する環境に置かれます。
上司が外国人ということも日常的にあり得ることです。
また、日本の企業は国内の経済のパイが小さくなれば、外に出ることを考える必要があります。

 

―そうなると、語学など実務やグローバル体験教育ができる専門学校に対する企業の期待や見方も変わってくるということですか。

岩本

間違いなく変わってきたと感じています。
今でも、専門学校は大学に落ちた人が行くところだという認識を持っている人もいますが、そうではありません。
専門学校の学生は専門的な職業教育を受けているエッセンシャルワーカーでもあります。

当校の英語科には、文系大学の英語科の学生よりも英語がうまい学生がいます。
教える側はネイティブの先生も多く、学生数も1クラス20人と少数でやっていますから上達も早い。
ですから、当校の英語科に2年通い、その後、国内外の大学の3年に編入すれば学生の力をさらに上げることができると考えています。
そのために、国内外の大学への編入もできる環境を整えてきましたし、実際に良い結果が出ています。

 

―新型コロナウイルス感染拡大防止のために休講する大学もありましたが、こちらでは、授業を続けることができたそうですね。

岩本

今回、コロナ禍で大学では授業ができず、残念な思いをした学生さんも多いと思います。
大学が休講にしなければならなかった主な理由は、授業の形態にもあると考えます。
大学では1人の教授が100人以上を相手にする講義もありますから、コロナに感染しても追跡ができない。
だから、休講にせざるを得なかった。

一方、専門学校は設置基準で1教室に40人までしか入れることができませんし、日本語学科については20人までです。
担任制のため健康面などの管理もできる。
だから、コロナ禍でも専門学校は対面で授業ができたのです。
そういうところでも専門学校は見直されています。

 

新型コロナ問題で日本人学生が増加

―留学生に占めるアジア圏の比率はどのくらいですか。

岩本

当校では現在、650人余の学生が在籍していますが、その内3分の1が日本人で3分の2が留学生です。
留学生を地域別にみるとアジアが多く、7割ほどを占めています。
欧米が3割程度ですが、最近はアメリカからの留学生も増えています。

 

―新型コロナウイルス問題で、海外からの留学希望者が日本に来ることができない期間が続きましたから、大きな影響を受けたのではありませんか。

岩本

毎年、当校の日本語科には外国人留学生280人程が入学・在籍しますが、現在はコロナ禍で約30人しか入学出来ていません。
入学希望者はみんな当校への日本在留資格認定証明書を取得していますが、日本入国ビザが下りず、自国で待っている状態です。

留学生が入ってこないのは痛手ですが、コロナ禍の今は日本人が増えています。
通常、日本人の学生の数は60人~70人でしたが、それがコロナ禍で2倍になり、留学生の減少を補っています。

日本人も海外に留学できませんから、英語を勉強したいという人たちが、英語学科を持つ当校で英語を学び、国内外の大学に編入しようと考えるようになったのだと考えています。

 

―グローバル化を進めるうえで、岩本理事長自身が福岡青年会議所(福岡JC)の理事長を経験されたことも役に立ったのではないですか。

岩本

2002年に福岡JCの理事長を務めた期間に経験したことは、当校の運営においても大いに役立ちました。
例えば、私が理事長時代に「国際青年会議所(JCI)2004年世界会議」を福岡に誘致しましたが、この時、福岡JCの代表として2度、世界の国々をまわりました。
当時は、東京や京都、大阪は海外でも認知度が高かったのですが、福岡について知っている人はまだ少ない。
福岡の良さを知ってもらうために、理事長として福岡を一所懸命にPRしてまわりました。

日本語学科を開設した際、中国をはじめアジアや欧米などにPRにまわりましたが、そこでも福岡のことは知られていない。
福岡JCの理事長として世界で福岡のPRをした経験がこの時に生かすことができました。
また、福岡JCという大きな組織の運営に携わった経験は、学校経営においても非常に役に立っています。

 

―日本のグローバル化を語学教育で支えているわけですが、今後の課題は。

岩本

当校はグローバル化路線を敷き、マーケットを世界に求めました。
私が理事長に就任して19年になりますが、おかげさまで学生数は順調に増えてきました。
現在、650人の学生が在籍していますが、定員720人まで増やしたいと考えています。

そのためには、前述しましたように当校が受け入れる100ヵ国と進学先としての100の提携校の実現を目指して、我々自身のグローバル化をさらに推し進める必要があると感じていますし、
学園ブランドコンセプト「WE ARE A GLOBAL FAMILY!」を掲げ、教職員一丸となってその実現のために頑張っています。

インターネットの普及によって、情報を世界に発信できるようになりました。
日本人の学生も大半がインターネットで応募してくる時代です。
グローバル化を進める当校としてはネットで当校の情報を発信できるのは追い風です。

 

来年、創立120周年を迎えます。
学校が120年近く続いたのは、社会の変化に適応できたからだと考えます。

今後もグローバル化を推し進めながら、
「世界の懸け橋として活躍できる人財育成」で社会貢献を果たしていきたいと考えています。

 

<学校概要>
法人名  学校法人 福岡成蹊学園 福岡外語専門学校
住所   福岡市東区馬出1-8-27
TEL    092-631-0147
代表   岩本 仁
学科   英語学科、国際文化科・国際ビジネス科、日本語学科
URL   https://www.fflc.ac.jp/

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